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朝食を終えた後、チェックアウトをして街に出た三人
街の大通りは行き交う人々で溢れ返っている
あちらこちらで商人の声が飛び交う
この国は商業も盛んであるらしい
「さてさて、おなかもいっぱいになったところで出発〜!」
何故かいつもよりウキウキとしているメフィスにフェレスが尋ねる
「なんでテンション高いんだお前」
「よくよく考えたらエルティとお出かけするの久しぶりじゃん? なんかワクワクしてきちゃった」
メフィスの言うとおり、最後にエルティと外出したのはもう何年も前のことだった
その時はお忍びで城下に出たのだ
二人で抜け出そうとしたところでフェレスに見つかったので、彼も道連れにした
そのことを思い出すとなんだか楽しくなってきた
「…子供かよ」
「うるさいフェレス」
メフィスは、ぼそりとフェレスが呟いた呆れ声も聞き逃さなかった
メフィスは兄の横っ腹に肘鉄を軽く喰らわせる
「うぐっ、暴力的だぞお前」
なにかとすぐに手が出る妹にフェレスは痛む箇所を抑えながら恨めしそうに言った
「ほら、二人とも。遊んでないで行くわよ?」
「はーい」
しかしその声はメフィスに届くことはなく、妹は少し先に行ってしまったエルティに追いつくようにかけていった
結果的にフェレスは一人その場に残されてしまう
「いや、置いてくなよ」
置いて行かれたことに、慌てて二人を追いかけるフェレス
こんなところではぐれたら見つけだすのに苦労してしまう
小走りで追いかけると、なんとか追いつけた
そのまま三人は、時折露店に目を向けながら目的地へと歩いていく
活気のある街並みを通り過ぎながら彼女たちは雑談する
「でもさぁ、入団テストって何するんだろうね。書類審査がないってことは実力主義ってことかね??」
メフィスがこれからの入団テストの内容について話題に挙げた
「実力主義はあまりよろしくないと思うぞ俺は。時代は頭脳だろ?」
相も変わらずに自らの主張を訴えた
エルティは彼を慰める
「そうね、たしかに騎士にとって必要なのは体力だけではないわね。けどやはり体力面での仕事が多いし、もしそうだとしても仕方ないわ」
「やっぱりそうか…。はぁ、やだな」
「ふふ、だったらフェレスは受けなくていいってば! 私たちで受けてくるからさ」
兄の落ち込んだ姿に妹は慰めることなく追い打ちをかけた
「だからお前一人に任せるなんて無責任なことできるかよ!!」
任せて帰ることができるならとっくにしている
だがそんなことできない
大事な人をこの妹に任せれるはずがないのだ
妹は腕っぷしはあるが、頭はあまり働かせようとしない
超猛突進型の生き物なのだ
「だったらグズグズ言わない! うるさいんだからさ〜」
「…おう」
まったくもってそのとおりである
それがわかっているので、渋々と言った感じでフェレスが頷く
そしてこの辺でいつもエルティの仲裁が入るのだ
「頑張りましょう、二人とも」
「私とエルティなら合格確実だからだいじょーぶ! …まぁフェレスは危ういけど?」
「うるせー」
言い返せはしない
身体能力では妹に遠く及ばないのを自覚してはいるのだ
だが頭を使うものなら勝てる自信はある
まぁその試験があればいいが…
そう心の隅で願いながらフェレスは入団テストを受けれる場所へと向かった
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