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中には十数人の騎士が揃っており、エルティら四人を待っていた
彼らに遅れた事を謝り、整列する騎士の中に加わる
呼び出した全員が揃ったことを確認した団長が、話を始める
「今日ここに君たちを呼んだのは他でもない、任務の話だ。二十日後にウィスタル王城で行われるラジ王子訪問の際、城内での警護をやってもらいたい」
ウィスタル王城
クラリネス王国の首都ウィスタルにある王城である
そこには第二王子と第一王子が住んでいるとのことだ
今回、そこでラジ王子が招待され、茶会が開催されるらしい
普段なら城にいる衛兵で事足りるのだが、どうやらそれだけでは足りないらしい
「何かあったのですか?」
「うん。気づいている人はいると思うんだけど、最近妙な動きをしている集団がいてね。どうやら、それらは大きな動きを企んでるみたいなんだ」
ヒサメの言葉にその場にいた騎士達が僅かにざわめく
ヒサメ副団長がいっている集団とは、フェレスが言っていた不審な動きをする人間のことだろう
やはり、団長、副団長などの人は気が付いていたのだ
「本来ならそのような時期に国賓を招くわけにはいかないのだがね」
苦笑いをする団長
何故危険な時期であるのに国賓が招かれることになったのか、彼は知っているのだろう
その理由が彼の苦笑いを生んでいるのだ
「やると決まり、ラジ王子にも招待状が送られたからには取りやめることはできない。だから、せめて警護を多く置くことになった。だが、衛兵は城にいる者だけでは足らない。そこで、このセレグから人手を送る事になったんだ」
団長は一人一人の騎士と目線を合わせる
「ここにいる者はこちらで選ばせてもらった。実力は勿論、信用できるかも考慮させてもらった末の選抜だ」
信頼
少なくとも彼らは自分たちを信頼に当たる者と思ってくれているらしい
そのことが少し嬉しくもあった
「君たちのウィスタル行きは十八日後の明朝だ。それまでにこちらからラジ王子滞在中の情報は知らせる」
ここで今日する話は終わり、団長室から騎士たちが退出していく
エルティも退出しようとしたのだが、少し聞きたいことがあり、部屋にとどまる
ヒサメ副団長は自分の事を疑っていた
なのに今回のメンバーに選ばれた理由を聞きたかったのだ
「ヒサメ副団長。あの、フェレスやメフィスならわかりますけど、どうして私も選ばれたのでしょうか」
武や知に秀でている二人ならともかく、そのどちらにも秀でているとはいえない自分が選ばれた理由
「君だけではなく、三人を推薦したのはヒサメだよ」
エルティの問いに答えたのは団長で、その答えに反応を最も示したのはフェレスだった
「え。ヒサメ…副団長がっすか」
「何? フェレス、その顔」
こいつが何も企まずに人を推薦するとは思えない
しかも俺達三人を
その事が顔に露骨に出てしまっていたらしくヒサメににこやかな笑顔で尋ねられる
だが、あいにく団長の前で正直に言えるほど肝が据わっているわけではないのでここは押し黙っておく
「君達は新人だが、ヒサメが推薦するなんて珍しいからな」
珍しいとかさらに怪しい。というか嫌な予感しかしない
企んでる感がプンプンする
「企んでなんかいないから。それじゃ、三人ともよろしく。僕と団長はここに残らなきゃだからしっかりね」
「心を読むな、心を」
つい口から本音が漏れていた
団長の前で普段の態度で話してしまった
二人のやりとりを聞き、苦笑する団長に曖昧な笑みを返して誤魔化し、エルティとメフィスを連れて部屋を退出する
「やっぱり、不審な人達の事は団長とヒサメ副団長も気が付いていたみたいね。大事にならないといいけれど」
団長の部屋を出てすぐ、エルティが言ったことにフェレスが言葉を返す
「まぁ。それに関してはこの国がなんとかするだろ。俺らは末端の騎士は与えられた任務だけをこなすことに集中しようぜ。
にしてもクラリネスの王城か。念のために確認しとくけど、俺ら三人ともここの王族とは面識ないよな?」
フェレスの確認にメフィスは頷く
エルティは自身の記憶を辿ってみる
クラリネスとナスタチウムは正式な国交はほとんどなく、王族同士が顔を合わせたこともない
「この国との外交はほとんど行っていないし、公式に顔を合わせたことはないわ。けれど、姿絵とかで見た事はあるかもしれない」
「今回は騎士としての警護だし、フードするから問題ないとは思うけど、注意はしとこうぜ。メフィスもだぞ、イケメン見つけて声かけに行くなよ」
毎度毎度目立つのはエルティではなくてメフィスなので、釘を刺しておく
「はいはい。一応頭に入れとく〜」
だが、真面目に考慮していないメフィスに毎度のことながら頭が痛くなる
まぁ、流石にエルティの非になるようなことはしないだろうから大丈夫だろうが
本日の予定は終わったので三人は食堂へと行き、遅めの夕飯を摂ることにする
食堂にはもうほとんど騎士はいない
夕食を摂り終わって個々の時間を過ごしているのだろう
三人は空いている手近な席に座り、他愛もない会話をしながら日常のような一日を終える
何気ない日常となったこの時間が三人とも口には出さずとも好きだった
自国にいた時は身分やしきたりがあってこんな風に過ごすことができなかったから
期限付きのこの限られた時間を、出来るだけ楽しく、自由に過ごしていきたい
勿論、エルティの夢も叶えて
ウィスタル王城警護まであと二十日
ー第4話おわりー
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