中庭近くの通路で辺りを見回す兵士がいた


「試験を受けるという三人はどこへ行ったのだ? 試験の準備が整ったというのに…」


彼は三人の試験担当を任された上位の兵士であった

試験を始めるために三人を探しているのだ

下級の兵士に言われた場所には三人は見当たらず、こうして探し回っているのであった


「…探しているのはあそこの三人か?」


キョロキョロと辺りを見回す兵士に突如、誰かが声をかけた

声のした方を向くと、柱の陰にその人物はいるようで姿は見えなかったが、差し出された指は中庭を示していた

兵士は指差された方を見て、そこに兵士ではない色彩がよく目立つ三人の男女がいるのに気付いた

あの色彩はこの国では珍しい

報告にあった男女で間違いないだろう


「おお、あの者たちで間違いなさそうだ」

「…あの者たちを探していた理由は?」


柱の方にいる人物がそう尋ねてきた

声からして若い男であるようだった

そして、その声を兵士は聞いたことがあった

一体どこで聞いた声だったか、そう頭の隅で考えながらその問いに答える


「なんでも入団希望者らしくてな」

「入団? あの三人がか? …ならば試験の必要はない。実力はもう確かめさせてもらった」


ゆっくりと柱の陰から姿を現す人物


「なに? というかお前は? …し、失礼いたしました!! 大変なご無礼を」


相手の姿を確認した兵士は、自分が誰に対して口をきいていたのかを理解して深く頭を下げて謝罪した

その人物は金色の髪をもつ青年で、この兵士とは身分が天と地との差があった

青年は兵士に叱責を浴びせることなく、視線を中庭の三人に向けたまま再び言葉を発した


「あの三人に入団試験をする必要はない。すぐにいれてやれ」

「はっ、仰せのままに!」


青年は兵士の言葉を聞くと、小さく微笑み、その場を去って行った







ー第2話おわりー

[ 8/34 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -