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そろそろお開きにしようと、部屋の主である丸井を起こそうとその頬を数回叩く


「丸井! 丸井ー? だめだコレは起きないね…」


しかし、彼はすっかりと熟睡してしまったようで一向に起きる気配がない


「丸井はこのままでいいか。ゆりな先輩も起こしたほうがいいですか、一色先輩」


創真のゲソのピーナッツバター和えを食べて以来、気絶したまま眠ってしまったゆりなを起こしたほうがいいのかと、一色に確認をとる女性陣

一色は少し考える仕草を見せた後、首を横に振った


「僕が部屋に連れて行くからそのままで構わないよ」

「はーい」


さてと、と全員が丸井の部屋を見渡す

宴会前は綺麗だった部屋の床には至る所に瓶が置かれ、紙コップが散乱していた


「…………よし、解散!」


見て見ぬふりを決行

散らかった部屋はそのままに、創真と丸井を除いた一年生陣は部屋を出ていく


「次は絶対に片付けて帰るからな丸井! ほんと次こそはな! マジで!」


佐藤と青木は幸せそうに眠る丸井に約束をして去って行った


「さぁ、丸井くん。温かくしてお休み…」


部屋に残った一色は丸井に毛布を掛けてやり、創真は料理勝負で使用した包丁を手入れする


「創真くん! この歓迎会で晴れて君も極星の一員だ。分からない事があれば遠慮せず聞いてくれ」


一色のその言葉に、折角だからと創真が質問をする

どうやったら十傑になれるのか、と

それは十傑第七席の一色への挑発ともとれる質問だった

だが、一色はあえて笑顔を浮かべて創真へと向き直る


「ふふ…、そうだった。君は、この学園の頂点を獲るんだったね」

「ちょっとした親子喧嘩の最中で、ウチの親父に認められるにはそんくらいやんないとダメなんで。さっきの対決は引き分けでしたけど、いま先輩に勝ったら、俺が遠月で七番目になるの?」


完全なる挑発

創真は下剋上を成さんと、勝負を申し入れる


「素晴らしい!! 素晴らしい向上心だ創真くん! 今、僕は感動しているッ…。極星に住まう学生はそうでなくてはいけないよ!」

「お、おう…」


だが、予想とは反した一色の反応が返ってきたので創真が若干引き気味になる


「でも今日のところはおあずけだね。夜も更けた…。我々も休もう創真くん!」


創真を納得させ、部屋に帰らせた後に、部屋の隅に脱ぎ捨てられた服を着て、眠るゆりなを負ぶる一色

一度眠ったらなかなか起きない彼女は、背負うために動かしても全然目覚める気配はなかった

ゆりなを背負った後、丸井の部屋の電気を消し、部屋を出る

皆が寝静まった寮の廊下は、不気味なほど静かである

一階のゆりなの部屋へ向かうために、階段を下りる

薄暗いので、踏み外さないように細心の注意を払う

自分が落ちたら、必然的に背中にいるゆりなも危険な目に遭ってしまう

ゆっくりと着実に階段を下りた

廊下を歩きながらも、背中に感じる体温は昔のまま、何も変わらない

一色はゆりなの部屋の前に着き、彼女の上着のポケットから部屋の鍵を取り出し、扉を開ける

宴会の途中で眠ったゆりなを送るのはこれが初めてではなかったために、その手際はよかった

部屋の中に入り、優しくゆりなをベッドに寝かせてやり、掛布団を掛ける

静かに眠るゆりな

その寝顔はまだ、どこかに幼さを残している

一色は彼女に微笑み、そっと囁く


「おやすみ、ゆりな。また明日」


一色はゆりなの頭を一度だけ撫でると、静かに部屋を出ていった


―続く―

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