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歓迎会という名の宴会が始まり、盛り上がりもピークに達しようとしていた


「で…出たぁー、一色先輩のー」

「気づいたときには裸エプロンイリュージョン!!!」

「ぎゃははは」


吉野が手を叩き、丸井はテンションが上がって別人のように騒いでいる

榊は一色の裸エプロンに悲鳴を上げている

最初は引き気味だった創真もすっかり皆に馴染んでいた


「メシだ! メシが足りねーぞ!」


つまみが無くなったことに気が付いた創真が、つまみを要求すると、静かに楽しんでいた208号室の伊武崎が動いた


「…じゃあ今日燻した分出すか。スモークチーズと三種のジャーキー」

「わぁ、美味しいね伊武崎君」


ゆりなが伊武崎の料理を食べて感想を言うと、彼は小さく会釈をする


「ぐううっ。スモーキーな塩味がたまんねぇ!」

「伊武崎の仕事にハズレ無し!!」

「当然だろ」


再び座り、コップの中の飲み物をゆっくりと飲む伊武崎

そこに青木が追加料理を持ってきた


「おらぁ!! 追加だ! 食えっ。裏の畑でとれたばかりの野菜の詰め合わせかきあげ!」


出された料理を創真がさっそく食いつき、手づかみでザクザクとたいらげていく


「不味いわけが無い!」

「うははは! 美味いだろう、そうだろう」

「それじゃあ、私もいただくね、青木君」

「どうぞどうぞゆりな先輩!! 食ってください」


それでは遠慮なく、とゆりなが出されたかきあげを一つ食べると、口の中に甘い野菜の味が広がった

そこで、隣に座った一色に尋ねた


「これって一色畑のだよね?」


一色畑

極星寮の裏にあるとても広い農園である


「ん? そうだよ。今年は極星寮の皆が手伝ってくれたから、去年よりも美味しくできたんだ」

「畑広いから、私が手伝っても大変だったもんね」

「そうだね。ゆりな美味しいかい??」

「うん!」


一色の問い掛けにゆりなが笑顔で答えると、一色は満足そうに微笑み返す

そこで創真がタッパーを手に、二人に近寄ってきた

その後ろにはなぜか佐藤がうずくまっている


「そこのお二人もいかがっすか〜?」

「なぁに、それ?」

「ゲソのピーナッツバター和えっす」


ゲソのピーナッツバター和え?

ゆりなも一色も聞いたことのない名前だったが、あの幸平君が勧めるのなら美味しいのだろう

特に疑うこともなく、それを箸でつまみ、口にする

それと同時に後ろの方で吉野が悲鳴に近い声を上げた


「ゆりな先輩! それは食べちゃダメです!!」

「え?」


時すでに遅し

箸によって導かれたゲソは、ゆりなの口へと運ばれ、彼女の味覚を刺激する


「ま…、まず…い」


なんとも形容しがたい味

それは確かに今まで食べたことのない未知の味でした

ゆりなの視界は暗転し、そのまま後ろにパタリと倒れこんでしまった


「ゆりな!?」


一連の出来事に驚いた一色が、倒れこんだゆりなを心配そうにのぞきこむ

どうやら気を失っているだけのようだったので、一応の安心をおぼえる


「こぉら幸平〜!!」


ゲテモノを佐藤はともかく、ゆりなに食べさせたことに吉野が怒って幸平のタッパーを取り上げる


「こんな危険物は没収!」

「あはははは」


吉野に怒られたというのに幸平はテンションがおかしくなりすぎて笑っていた

佐藤はうずくまったままだった



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