※過去の話
※捏造
※挿し絵あり


























少し前のお話です。





場所はノースブルーのとある島の港町から程近い丘。




あれは、冬の珍しく暖かい夜半のことでした。



丘に生える木立の中にまるでその存在さえ認知されていないようにひっそりと2軒の家がありました。2軒とも貧しそうでもなければ裕福そうでもない、新しくも古くもなさそうな、ふつうの雪国仕様のレンガの家です。

ただし2つの内の一軒のほうはやたらとこじんまりとしてとても小さい家でしたが。






そのこじんまりとした家にはひとりの青年が住んでいました。

背はとても高く、栗色の髪はぼさぼさで目元を覆い、

左手には指輪が光っていました。






この日も青年はいつものようにランプを点けて机に向かっていると、



ドッッッッッすぅぅうううん!!!!!!!!!!




背後から効いたこともないような衝撃音。



反射的に振り向くとそこには、






暖炉のそばに血だらけの少年がいて、意識を失っていました。




「…っ?!こ、いつは…」






青年は少年の顔を見るなり、率直に、めんどくせーことになった。と思いました。































「………っ」ゴホッ



「…目ぇ覚めたか。気分はどうだ」



「………誰だ」



「は、第一声目がそれかよ」



青年は黒髪の少年を一瞥すると近くにあった椅子を引っ張り寄せ、上においてあった本たちを床において腰を下ろしました。



「…」



黒髪の少年はキッと青年を睨みますが、



「礼くらい言えっての」



青年はそういうと少年には見向きもせずにタバコに火を付けました。





















深く煙を吸い込んでゆっくり吐くと青年は目線を天井に向けたまま気怠そうに言いました。




「で?」




「…」


   
「で、お前どうしたんだ?」
   ´´´´´´´´

「…」




青年は黒髪の少年の包帯が巻かれた腹部をタバコで指しました。





「ん〜……鉄砲玉2つと刀傷は…まぁぼちぼちと。まぁ、フツーに考えて転んだんじゃねぇよな。それに」



「…」











「煙突から落ちてくるってお前…サンタか」



「ちがう」



「や、わかってるけどよ」






少年が寝ているベッド意外の場所には本しかないような部屋は静まり返ります。
















青年は不敵な笑みを浮かべて少年を見ました。



「…」



少年は青年を警戒しているのか眉間に深い皺を刻んでいます。





「俺がなんでそう思ったか教えてやるわ。暇だし。…一つは無人でも寝てても、泥棒なら――まぁその傷じゃありえんが、窓やドアやらをそのでかい刀で壊して入りゃあいい。だけどもだ。お前は煙突から入ってきた。…にしても、その傷で煙突降りるとか自殺行為すぎんだろ。結果足滑らしたみたいだしよ。まぁその傷でこんな雪の夜に外にいる方がもっと自殺行為か。ははっ……………なんでお前がそうしたのかはわかってる」



「…」
(こいつ…なんなんだ)




青年は少年を見据えていいました。






「煙突から入ってきたのはこの家に侵入したのを外部に悟らせないようにするため、だろ?…そして追っ手は海軍。ちがうか…?」



「!」


少年は目を見開きました。



「ん?当たりだろ?」



青年は立ち上がって、形容しようもないほど散らかったキッチンらしきところに入っていき、少ししてからポットとマグカップを持ってきました。
(持ってくる際、山積みの本を避けてくる大冒険を繰り広げました)



「持って」



「…」



青年は少年にマグカップを2つ持たせて熱いお茶を注ぎました。



「…なんで海軍だってわかった?」



「お前の腹にあった鉄砲玉の製造番号。ありゃあ海軍の特注品だ。みりゃあすぐわかる。っとサンキュー。お前も飲め」



青年は床にあった新聞の上にポットを置くと少年からカップを一つ貰いました。



「…」



少年は青年がカップに口をつけるのを見てから飲みはじめました。



「………そうか。…お前、医者か?」



少年は青年を伺うように言いました。



「んにゃ違う。たまに隣に住む医者を手伝ったりするけど、俺ぁただの考古学者だ」



「…俺を治療したのは?」



「ん。その隣に住んでる、このうちよりちょいとばかりデカい家に住んでる医者だ。今日は奴の弟が発表会にでるとかで街にいってる。その間俺がお前の世話を任されたって訳だ。あ、お前の手術、俺も手伝ったんだぜ?」



「…」



少年はマグカップに映る自分の顔を見つめてカップを握りしめました。

ただその少年の様子を見ていた青年は口を開きました。



















「…トラファルガー・ロー」










「……?!!!なん、で俺の名前を知ってやがる!」



「医学やってる奴が近所に住んでるもんでね。お前の顔写真と名前はよく見たよ。―――それでよかったら教えてくれないか?」





「…」













「ノースブルー史上類をみない医学の天才と呼ばてるお前がなんで海軍に追われているかを、よ」































*****












「は?、じゃあお前いまそれで海賊やってんのかよ?………だから最近の医学誌にお前載ってなかったのか………なるへそなるへそ」



「…今日は港についていきなり襲撃された。すぐにあいつらとはバラけて逃げた」



「あいつらって仲間か。」



「あぁ。…まだ2人しかいないがな。………海軍の奴らは船長の俺が狙いだ。多分あいつらも逃げ切れてる」



「…………そうだな」







ローは青年を凝視しました。



「…んだよ」



青年はめんどくさそうに目線を外しました。



「俺お前の事見たことあるんだが、どっかで会ったか…?」ジィー



「少なくとも俺ぁ記憶してねぇな。お前みたいな有名人がこんな田舎島に来たっつー話があったら隣の医者が狂喜乱舞で宴三昧して嫌でも覚えてる。あ、隣の医者、お前のファンだけど治療中に必要以上なお触りはなかったぜ。あれでも公私は分ける奴だ」



「……そりゃどーも。……にしても変わった奴だな。海賊になった俺を匿ってていいのかよ?親切に教えてやったのによ」



「匿うっていわねぇとお前は俺を殺すだろ」ハハハ!



「…」(まぁそうなんだけどな…)



「医者は今日の朝方街にたってったから明日帰るだろ。それまではこのきたねー部屋で我慢してくれな。」



「…」



少年は改めて自分がいるベッドの周りを見渡しました。天井まで渦高く積まれた本しかありませんでした。



「…これ全部考古学の本か」



「まぁな。ちょいちょい売って金にしてる」



「なに研究してんだ?」



「お、聞いてくれるか?」



「興味がある」



「…あー…」



青年は一瞬嬉しそうな顔をしましたが次の瞬間には厳しい表情になりました。



「?」



「俺も実はこの研究で海軍に目ぇつけられててな、だから俺の話聞いたらお前も同罪に――――ってお前すでに無法者か」



「そうだな」





2人が声を出さずに笑いあいました。




「詳しく話したらめちゃくちゃなげぇからざっくり言うぜ」






青年は息を深く吸い込み、いいました。





「おれは『ワンピース』について研究している」




そして青年は語りはじめました。まるで子供のように目を輝かせて。




「この世界の海はグランドラインとレッドラインによって4つの海にわけらているよな?で、ひとつなぎの大秘宝てのは、これらの海をひとつにすることなんじゃねぇか?…具体的にいうと、レッドラインを破壊するものだ。レッドラインが破壊されれば、それに伴った環境の変化でグランドラインは消滅する。――――世界は、『ひとつなぎ』になるんだ。オールブルーも、レッドライン、グランドラインという『敷居』がなるなることによって、完成する。つまりグランドライン最果ての島『ラフテル』にはレッドラインを沈めることができる‘何かが’があり、その‘何か’が、」




「…」





「大秘宝、『ワンピース』だ」





「!!!」




「俺はこのことを立証するために研究してる」








「…本当にざっくりとした推論だな」



「推論じゃねえ。研究から導きだしたひとつの『答え』だ。……この研究を初めて街で発表したとき、周りからは現実味がなさすぎる、馬鹿らしいって言われた。…けどな、」



「?」



「海軍がここに訪ねてきてよ、俺にこの研究はするなって厳重注意をして俺の参考文献を燃やしていった」



「!!それってつまり…!」



「ああ。………俺は大分真理に近いとこまで近づいているらしい」




「くくく…にしてもぶっ飛んだ仮説だな」



「あのな…ほんとはもっと難しいんだぜ?ざっくりいっただけだ」

















「……………なぁ、」




「ん?」



「お前、俺とこないか?」



ドンドン!!!

おい!!!ヴァント!!ここを開けろ!!!

ドンドン!!!




「お!誘ってくれんのか?」



ドンドン!!!



「こんなとこで研究しててもらちがあかねぇだろ?」



「…しかしだな………」



ドンドン!!!

海賊を匿ってるだろう!!!
ここを開けろ!!!







「『ラフテル』までつれてってやる。……――ついてこい」どっかぁあああん!!!!




「…」「…」





海軍A:「そこの2人!!!手を挙げなさい!!!海軍だ!!!」



青年:「…あぁあぁドア壊しやがって…医者にまた起こられる…」



海軍B:「トラファルガー・ローにヴァント・ヒューゲル 。お前ら二人を抹殺しろとの上からのお達しだ。外にでろ」





ロー:「ヴァント…ヒューゲ…………思い出した。…お前あの考古学者、ヴァント・ヒューゲルかよ…」



ヴァント:「今頃気づいたのか」



ロー:「もっとじぃさんだと思ってた。それに死んだって新聞で読んだぞ?」



ヴァント:「…………俺は学会に物言わせなくするために世間的に海軍に殺されたんだ」



ロー:「…まじかよ」



ヴァント:「今まで適当に生かされてきたけどそれも今日で終わりらしい」



海軍A:「何をごちゃごちゃと…!!!手を挙げろといっているんだ!!!」



ローは未だ毛布の下にある右手を広げ、




ヴンッ



海軍B:「な、なんだ?!!!」



ロー:「そこの俺の刀貸せ」



ヴァント:「よっ」



ローは受け取るとすぐあの言葉をいいました」








ロー:「シャンブルズ」
















**********



ヴァント:「…それが言ってたお前の能力か」



ロー:「まぁな。」























ヴァント:「…さっき言ったが俺は『俺』という存在をけされた、生きてるようで死んでる人間だ。俺は今隣にいる医者に一応‘監視’されて生活してんだ」



ロー:「…」



ヴァント:「研究できるが誰にも言えず世間に公表もできない、学者にとって今の俺のこの状況はまさに『死』だ」



ロー:「…」




ヴァント:「さっきは誘ってくれてありがとな。…でも俺がお前についていったら医者に迷惑がかかっちまう…」




ロー:「…」
(医者は俺をこいつに任せて街にいったり、こいつはこいつでこんなに医者のことを考えてる。考えてなかったら自分の生涯をかけた研究が完成するかもしれないのに、…………信頼関係、か)










ロー:「でもお前は、俺ときたいんじゃねぇか?」



ヴァント:「…」




ローはベッドから立ち上がりバラバラになった海軍兵の頭を持ち上げ、思いついたようにました。











ロー:「今から『お前』を『殺す』」



ヴァント:「は?!!!」



ヴァントは慌てて伏せていた顔を上げました。




ロー:「今からこの海軍兵をお前に見立てる。…海軍兵の死体がひとつ足りなくなるからお前、なんか狩った動物の骨出せ。後肉も。人間っぽいものを作る。後からこの家燃やしたらわかりゃしねぇよ。――海軍へのシナリオはこうだ。『トラファルガー・ローが海賊だとは知らずに助けた心優しい市民が街に行ってる間にトラファルガー・ローの居場所を嗅ぎ付け住宅に突入するもトラファルガー・ローが殺して住宅に放火。ついでに生きた幽霊もそれに巻き込まれ死亡。』どうだ?」



そういうとローはその場にしゃがみこんで何やら作業を始めました。



ヴァント:「…残忍だな。お前」


ヴァントは顔を真っ青にして笑いながらローの手元を見ます。



ロー:「よく言われる。これがすんだら家を燃やす。今のうちに準備しとけ」



ヴァント:「…あぁ」




ロー:「改めて聞く。俺と来るか?」



ヴァント:「っ!……くくっ改めてもなにもお前、俺と来るかって始めていったぞ。お前は俺に『俺と来い』っつったんだ」



ロー:「そうだったか?」



ヴァント:「ああ。………ロー」







ロー:「なんだ」



ヴァント:「俺を連れていけ。『ラフテル』まで」






ローはヴァントの方には振り向きもせず言いました。



ロー:「任せろ」next
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