秘め事(4/19)


「天気良くて良かったな。風もちょうどいいし、花見日和だな」

「うん」


カラスが飛んでいた空はオレンジ色が深くなっていた。鮮やかに刻々と変化していく空模様と共に桜も表情を変えていく。


「俺夕方くらいの空が一番好き。あっ、あっちの空、雲と夕日が重なってすげー綺麗!」

「…空見るの好きなんだ」

「…あー、うん。綺麗な空って何も考えないでずっと見てられるじゃん」

「………」


ふと視線を感じて夏見の方を向くと、夏見が俺をじっと見ていた。


「なんだよ。また女子っぽいとか思ったんだろ」

「…いや。広瀬は想像してた感じと違うなと思って」

「…良い意味で?」

「良い意味で」


…お? 気に入ってもらえたってことか?

相変わらず眠そうな無表情だけど最初のときよりはどことなく柔らかい顔つきになったような気もする。
俺も夏見が想像していた以上に面白くていい奴だなと思っていたからそう言ってもらえるのは嬉しかった。


「ピアス」

「ん?」


夏見が俺を見たままポツリと呟く。


「軟骨には開けないの?」


俺の耳には右の耳たぶに3つ、左の耳たぶに2つピアスが付いている。でも軟骨の部分はまだ1つも開いてない。


「前に一回開けたことあるんだけど全然安定しなくて結局外しちゃったんだよ。また挑戦したいとは思ってるんだけどなぁ」

「ピアッサー?」

「うん」

「多分、ニードル使った方がいい」

「…にーどるって何?」

「でかい注射針みたいなやつ。それで開けた方が治りが早い」

「へぇぇーそうなんだ。…ていうか何でそんな詳しいの? 夏見も開けてんの?」


耳にかかっている髪を指先でかき上げて耳を見る。でもどちらにもピアスも穴も見当たらない。


「…ここ」


そう言うと夏見は口を軽く開けて舌を出した。


「うよおおおっ!?」


舌の真ん中に銀色の球が一つ乗っかっている。驚きすぎて俺はまた変な叫び声を上げてしまった。


「すっ…げー!舌ピアス!?初めて見たっ…!自分で開けたのか?」

「うん」

「うわー!すげー!」


こんな落ち着いた外見で舌ピアスって、意外にもほどがあるだろ。

想像を遥かに超えるほどぶっ飛んでいる夏見に俺はますます惹かれてしまった。


それから俺たちはピアス談義をしながら花見を楽しんだ。口数は少ないけど夏見と話すのは不思議と気楽で楽しかった。


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