※※第307話:Make Love(&Aphrodisiac).186







 「どこをどうご覧になったらそうお見えになるんですかーっ!?」
 「どこをどう見てもそうにしか見えねえ……」
 「えええ!?かわいい!」
 撫で撫でしたかっただけのナナはびっくり仰天してから、声の甘さに萌えた。
 今日は張り切って宿題を早く片付けたことへのご褒美だと、心から思えるような至福の午後を満喫しております。

 「どこをどう見てもかわいいのはおまえだろ、つうかおまえしかいねぇだろ。」
 「薔にはご自身が見えてらっしゃいませんからね!鏡をお持ちしましょうか!?」
 「おい……俺の言う事が信じらんねぇのか?」
 「そうではないんですけど、あのっ、恥ずかしいですよ!」
 「恥ずかしいならいっそ認めちまえよ。」
 かわいいで萌えたナナは最終的に、諭された。
 ちょっとご機嫌ななめとなった彼も可愛くて堪らず、上手く丸め込まれる形に落ち着いた。




 「それに、いい匂いもするしな?」
 くすっと笑った薔はそっと寝返りを打つと、ぎゅっと彼女に抱きついた。
 「ひゃわあっ!?くすぐったいっ……ですって…っ!」
 ほんとうは“くすぐったくて気持ちがいいです”なのだけど、真っ赤になったナナは思わずすっとんきょうな声を上げた。
 いい匂いについてはあなたさまこそと言い返したかったが、生憎そんな余裕は一欠片も残されていなかった。


 「…――――――抱きつくのはダメか?」
 抱きついたまま、どこか潤んだ視線だけ上に向けて薔は確かめてくる。
 もしかしたら彼は、甘えたモードに入っているのかも。

 「ダ……ダメでは、ないです、けど……」
 甘えられている最中なのに、服従させられているような妖艶な感覚すらして、ナナは素直に応えるしかなかった。
 彼の視線は、蕩けているように見えるときでさえ、優しい棘となり躰の内側を柔和に突き刺す。

 「良かった……」
 安心したのか、瞳を閉じた薔はますます強く抱きついてくる。
 「………………!?」
 ナナはここぞとばかりに、髪の毛を撫で撫でさせてもらえばいいのに、夢の国へいざなわれる前に。


 「殴るなら今のうちだぞ?」
 「な…っ!?殴りませんよっ!何があっても殴りません!」
 彼は面白そうに提案をして、殴らないことを宣言したナナは手の構えをパーに変えた。
 だから、今こそ撫で撫でする絶好の機会だってば。



 そのうちに、

 「……ん、」
 「はい?」

 薔は片手を彼女の腰に回したまま、チョキを出してきた。
 最初は意味がわからず、ナナはキョトンとした。


 「俺の勝ち……」
 くすくすと笑って、彼は長くてきれいな二本のゆびを悪戯っぽく動かす。
 「あーっ!ずるいですーっ!」
 ということでここからはナナと薔の、じゃんけん大会が開催されることとなった。

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