※※第307話:Make Love(&Aphrodisiac).186
いよいよ、やってまいりました、
《F・B・D\》!
謎を少しずつ解き明かしたり、深めたりもしつつ、
濃密に濃厚に始めていっちゃいましょうか。
…………Are you ready?
(どっ、どこを見ていたらいいのかが、わかりません…!)
\が始まって早々に、ナナは目のやり場に困っていた。
ときめきに鼓動が高鳴りすぎて、ぷるぷるさせたい両手を必死で握りしめている。
そんな彼女に膝枕をしてもらいながら、薔は静かに眠っていた。
お家でまったりザザえもん鑑賞をする場合には、わりと恒例のシーン到来です。
(あああっ!もうっ、かわいすぎてずっと薔を見ていたいけど、ずっと見ていられたら心臓がもたないよーっ!かわいすぎる!困った!)
ナナはもはやザザえもんそっちのけで、心行くまで本能の赴くままに彼の寝顔に魅入っているべきかどうか悩んでいた。
魅入っていたら途中で危うく、うっとりのあまり涎を垂らしそうになると思われる。
ザザえもんが何かごちゃごちゃ言ったおかげでピノ太くんに仕置かれているのだけど、台詞は一つも耳に届かない。
(ここは思いきって……お髪を撫でさせていただいてもよろしいでしょうか!?)
ふと、ナナは本能が赴きすぎてしまったようだ。
見ているだけでも心臓がもたなそうだと自負しているくせに、髪を撫で撫でさせてもらおうかという考えにいきなり行きついた。
本能は猛者に等しい。
(えーと、どっちの手で撫でよう……)
握りしめている左右の手を見比べ、ナナはまた悩んだ。
興奮により手に汗握っていたため、どちらの手も若干しっとりしていて今は不向きに思えてくる。
でも撫で撫でしたい衝動にはなかなか抗えるものではない。
「こっち側なら、大丈夫かな……」
ついに心の声には留められなくなり、ぽつりと呟いたナナは右手の甲で撫で撫でをさせてもらおうと判断した。
手の甲で髪を撫でるのは、非常に難易度が高い、しかも試みているのはヒロインだし。
そろそろと、優しくグーにした状態でナナは彼の髪へと右手を下ろしていった。
ごくりと息を呑み、息を潜めているがそもそもザザえもんがそれなりの音量で上映されている。
あと少しで、髪に手の甲が触れようとしたとき、
「…………ん…?」
気配を感じ取ったのか、薔は目を覚ましてしまった。
(はわあああ!?)
驚いたナナは目を見開き、ぴたりと握りこぶしを止める。
あともう少しで、さらっさらでいい匂いがする髪の毛にグーで触れられそうだったのに。
「………………。」
目を覚ましたとたん握りこぶしが頭上にあり、しばらく黙って見上げていた薔はやや甘い声で問いかけた。
「何でおまえ、俺を殴ろうとしてんだ?」
[ 15/536 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る