※※第339話:Make Love(&Acquisitive).206







 善がっているナナは、彼の言葉の意味を深く理解できる余裕がない。
 だからこそ薔は言葉にしているのだろうけれど。

 「あっあっあっああ…――――――…っっ!」
 しがみついたナナは絶頂を得る。
 髪を撫でる手つきは優しいのに、ピストンは相変わらず激しい。

 「愛って、強欲だな?」
 耳にキスをして薔は吹き掛けた。
 彼は力強くもあり、不安定にもなるときがあるからナナは余計に離れられなくなる。
 その儚さは彼だけの特権であって、彼だけが持ち得る魅力なのだ。

 「燃え上がる犠牲心を次々と灰にして、純粋な欲望の上に成り立ってる……」

 耳を今度は甘噛みすると、薔は自嘲気味に笑った。
 彼をヴァンパイアに変えることのできないナナは、真意を知ることもできない。
 自分に忍び寄る悪夢の存在があることも、知る術を持っていない。


 「あっっ!」
 ナナがまたしても絶頂を得ると、彼は動きを速めた。
 奥深くに突き挿れて、濃厚に彼女を絡めていった。

 「ほら、イってる間も腰振ってろよ……」
 ガタガタと戦慄く彼女を腰づかいで促し、薔は鼓動を高め幾度となく膣を攻め立てた。
 猛々しく突き上げられるナナは意識が飛びそうで、彼に抱かれてひたすら善がる。


 「あっあっあんっあっ、ひあ…っ、ああっあっあっあふっあっ…っ、ああんんっあ…っ、」
 口の端を伝う唾液を舐め上げられ、もう、極上の彼を感じることしかできない。
 ナナだってずっと、彼と一緒にいたい。

 でもそれは、決して叶わないことなのだという実感をまだ持つことができずにいた。
 ふたりはこのままずっと、一緒にいられるのだと、そう思えていた自分がいた。

 確かな未来のことは誰にもわからない、不安を抱くことも期待を抱くこともできる。
 しかしながらどう足掻いても、いずれやってくる非情な運命というものは確かに、存在していた。
 覆す希望を、見出すことは果たしてできるのだろうか。




 「あああああ――――――――――…っっ!」
 悲鳴に似たイキ声を響かせ、ナナは絶頂を得た。
 「……っ!」
 ほぼ同時に薔も射精をすると、強引に彼女の顎を掴みくちびるを奪った。

 勢いよく中に出しながら、口の中に舌を入れて妖艶に愛撫した。

 「んっんっ…ふうっ、ん…っ、」
 ナナも必死に舌を伸ばして、キスを求める。
 その可愛い舌を咬んで、赤く染めるのは簡単だった。

 そうしてしまいたい衝動を抑え込むのが、堪え難い難儀だった。













  …――But I don't regret loving.

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