※※第315話:Make Love(&Ravish).191







 (んんん?)
 ふと、ナナは昨日母が言っていたことを思い出していた。
 何でも、長年独身でいた雅之の会社の上司(一度係長になったきりその後昇進できない系)が、“出会い系アプリ”とやらで知り合った若い子と付き合い始めたらしい。
 仕事中にもちょくちょくスマホを確認しているため、ナナ父も怪しいとは思ったらしい。
 毎日ことあるごとに同じ内容のノロケ話を繰り返し聞かされて疲れて帰ってくる夫の愚痴を聞き、ナナ母は叱咤激励をしているんだとか何とか。
 そんな理由で仕事を休もうものならただでは置かないという意味での叱咤激励だと思われるが、愛する妻にされるなら効果てきめんです。

 世の中捨てたもんじゃないようでいて掃いて捨てたほうがいいのかしら……と、母がぽつりと言っていたことまでナナは思い出す。
 娘にとっては意味不明な呟きだったとしても。


 「しょっ、薔……?」
 「ん?」
 ちょっと確認のために名前を呼んでみる。
 名前を呼んでいるのに彼はスマホを見ている。


 (はわぁぁぁあああ!?)
 口をあんぐりと開けたナナは、あまりにもとっぴな疑惑を抱いてしまった。
 わたしが話しているのに、なぜにそちらを見てらっしゃるんですか!?の眼差しで、薔を凝視する。
 溺愛も溺愛しまくっている彼女がまたデートに行きたいとか可愛いことを言っているから、さくっと下調べしているだけなのに、ナナ母はこうなること(おそらく濃厚になること)を狙っていたのだろうか。

 見つめていると一瞬、美しすぎる横顔にうっとりして夢の国へといざなわれかけたものの、今はそれどころではない。
 涎を垂らす寸前ではっとして我に返ったナナは、無謀にもほどがある質問をぶつけてしまった。

 「もしや薔は、“であいけいあぷり”とやらをご覧になってらっしゃるんですか―――――――――――っ!?」

 あーっ、ぁーっ…(※であいけいあぷりの意味よくわかってませんけど!なエコー)







 「……あ?」
 たった一文字の返しには濁点必須である。

 当然のことながら、薔の雰囲気はそら険しくなった。
 険しさだけで彼女を震撼させ軽くイかせられるほどまでに、険しくなった。

 単純に考えて、薔は高校生で16歳なので年齢的なものがあるし、第一に超絶美形に対して投げ掛けていい質問ではない。
 一途に溺愛している彼女に投げ掛けられると愚問にも値しない。


 「おまえ……まだ寝惚けてんのか?」
 「起きてますよ!宿題だってちゃんとやってますもん!」
 見つめられたというか睨まれたナナはめちゃくちゃドキドキして怯みはしたが、めげずに食い下がった。

 「わたしがあまりにもエッチになってしまったから、いけないんですか!?旅館でもほとんどずっと薔にエッチなことされてましたし……ずっとずっと嬉しかったのにーっ!だいたい、わたしをこんなにもエッチにしたのは薔ではないですか!」
 「支離滅裂なわりにはやたら可愛いこと言ってんな、こいつ……」
 勢いに任せてナナは恥ずかしいことを口走り、ちょっと感心した薔はそろそろ押し倒したくなっている。

 ナナは完全に、出会い系アプリの意味をわかっていない模様です。
 そもそも薔はずっとナナと一緒にいる、目を離すと竜紀とか色々危ないので。

[ 123/536 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る