※※第275話:Make Love(&Make Love!).17
それは、とても単純で簡単なことだ。
離れたくなければ、何があっても離れなければいい。
離したくなければ、何があっても離さなければいい。
とても単純で簡単なことのはずなのに、時にあまりにも困難で傷だらけにまでならなければいけないのは、どうしてなんだろう。
ただ、ずっと一緒にいたいだけなのに。
ずっとそばにいたいだけなのに。
デートの約束をしたこけしちゃんは、念のため、正装をしていったほうがいいのかLINEのメッセージで確認してみた。
高級レストランに連れて行かれた場合、そぐわない格好をしているのは恥ずかしいと思ったから。
醐留権の返事では、特に正装ではなくカジュアルな格好で良いということで、こけしちゃんは着ていくものについて悩みに悩んで鏡とにらめっこを続けた結果、無難と思われるところでワンピースを選んだ。
夜も蒸し暑い日だったから、丈の短めなワンピースにしていた。
「………………。」
堅苦しくないのがいいと思いファミレスに彼女を連れてきた醐留権は、なかなかの薄着だしワンピースの丈が短いしで、早くも目のやり場に困っている、
あ、眼鏡のやり場か?
さほど妖しいムードにもならないと考慮した上でファミレスを選んだというのに、彼女のこの容赦ない色気はどうしてくれようか(※ゾーラ先生ビジョン)。
「あぁぁ、新しいフェア始まったんだぁ、どれも美味しそうで迷うなぁぁ。」
ニコニコのこけしちゃんも内心ではドキドキで、生徒のなかでは自分しか見ることのできないプライベートでスーツ姿のゾーラ先生にときめきすぎて、ザ・要先生に置き換えてみる余裕がなくなっている。
醐留権先生としては、目の前の彼女がとにかく美味しそうで迷わず食べてしまいたい。
「ゾーラ先生ぇはぁ、もう決まったのぉぉ?」
「ああ、メニューの中ではいちおうすでに決めてある。」
「えぇぇ?」
メニュー表から顔を上げたこけしちゃんは尋ね、さりげなくこの後の狙いも込めて醐留権が返すと彼女はキョトォォンとした。
「じゃあぁ、あたしはこれにしようぅぅ。」
やがて、こけしちゃんも注文を決め、醐留権が店員さんを呼びふたりぶんの注文をした。
ドリンクバーも頼んだので、持ちに行こうとする前に、
「そうだぁ、ゾーラ先生ぇぇ、あたしねぇ、お願いがあるのぉぉ。」
「なんだい?」
ふと思い出したこけしちゃんは、にっこにことお願いとやらをしてきた。
「海に行くときぃ、真依さぁんカップルも一緒に呼びたいんだぁぁ。」
と。
「そうか、予定が合うのなら私は全く構わないよ。」
眼鏡をくいっとさせて微笑んで見せた醐留権先生は、こけしちゃんと真依が揃うという状況が若干心配でもあった。
ふたりしてあっちの世界に行ってしまいそうなので。
[ 112/539 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る