※※第267話:Make Love(&Precious).162
レイトショーまでやっていて、内容はラブロマンスとくれば、R指定だった。
公開されてすぐに観に行った同僚から面白いよと聞かされていた真依はほんとうにずっと観たいと思っていた作品で、しかも自分さえ素直になれたら座ってみたいと思っていたカップルシートに半ば強引に座らされていた。
(どうしよう!?今日の屡薇くん、やっぱりすごくかっこいい!入り口で宇宙人捕獲したからかな!?)
半ば強引に座らされた時点で内心ではときめきすぎて、真依は赤い頬を隠すように黙って俯いた。
ちなみに彼氏は宇宙人を捕獲してなどおりません。
(真依さんちょっとご機嫌ななめ?強引に座らせたのがまずかったかな……)
黙って俯いている彼女がご機嫌ななめなのではないかと思っている屡薇は、このあと自然な流れでマグナムとやらを爆発させる方向に持っていけるかが心配になってくる。
映画の内容がR指定なためにもはやその部分に頼るしかないかとも思っているが、カップルシートに並んで座らせた時点でばっちり彼女のハートを掴むことに成功していた。
気づいていないだけ。
Lサイズのポップコーン(真依の要望でキャラメル味)は屡薇が彼女のすぐ近くで手にしており、それぞれのドリンクは肘掛けのホルダーに置いている。
隔たりがないので否応なしに、かなり密着している。
(これじゃまるでラブラブな恋人同士だよ!)
正真正銘ラブラブなカップルの彼女のほうである真依は突然、恥ずかしさのあまり彼が手にしているポップコーンを床に叩きつけたくなった。
「映画館で食うポップコーンってやけに美味いよね?真依さんも食いなよ。」
そんな彼女の衝動を知る由もない屡薇は、さりげなくご機嫌取りも兼ねてポップコーンを勧めた。
まだ上映前にも拘わらず、彼は豪快にポップコーンを頬張っている。
「こっ、これが、呑気にポップコーン食べてられる状況だと思う!?」
「ぇえ…?呑気にポップコーン食うにはかなりうってつけの状況だと思うけど……あ、呑気に食うのがダメなの?鬼気迫る感じで食ったほうがいいの?」
「ホラーじゃないんだからそこは呑気でいいよ!」
「だよね。」
自分でもおかしなことを言ってしまったと思った真依は慌てて、彼に買ってもらったジンジャーエールを飲んだ。
ご機嫌ななめに見えたのは自分の勘違いだと気づけた屡薇は、彼女の様子に安心して何だか面白くなってくる。
真依はずっとストローに口をつけているけれど、量が全然減っていない。
カップを持つ手もぷるぷるとふるえている。
「あーんしてあげようか?」
「ばっ、ばかじゃないの!?てか屡薇くん、ばか!」
「うん、俺ばかかも。真依さんが可愛いから。」
「はぁぁぁぁあああ!?」
真依は自分の反応が招いた意地悪心によりからかわれ、ふたりはまさしくラブラブな恋人同士だった。
彼女がジンジャーエールのカップを握りつぶす勢いでストローから口を離すと、館内の照明が落ちてまずは新作映画の予告がスクリーンに映し出された。
[ 526/537 ][前へ] [次へ]
[ページを選ぶ]
[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]
戻る