※※第260話:Make Love(&Escape).157















 もうあと数分でお昼休みという頃、ようやく2-5の教室にはナナが戻ってきた。
 ちなみに、お昼休みを一斉に取るようなことはせず(あまりにも暇なら一斉に取れるけれど)、交代制で皆お昼休みは取ることになっている。
 この頃、醐留権先生はようやく客足がだいぶ落ち着いてきたので、薔が帰ってきた時点でいかんせん休憩を取らせてほしくて仕方なくなっていた。
 なんだかんだで自分も、メイドをやらされている彼女のことが非常に気になっているので、休憩がてら偵察には行きたいとひたすら思っていた。
 洗顔に励んでいた羚亜も戻ってはきており、ゾーラ先生はあとはしばらく生徒たちに任せておきたかった。




 「ふぅ……凄かった……」
 教室に戻ってきたとたんのナナの第一声は、こうだった。
 己を落ち着かせるために思わず言ってしまったのか、お化け屋敷自体は彼氏の頼もしさのおかげでさほど凄くはなかったのだし。


 (何が凄かったの…!?)
 勝手に連れ出していったひとが連れ出していったひとなので、クラスの皆さんは脳内がR指定となった。
 実際にR指定だったわけなのでただお化け屋敷に行っていただけにしては、時間が掛かった気は否めない。

 2-5は特に満席ということもなく、皆お昼には焼きそばだのたこ焼きだのといったものが食べたいのかガッツリ系が戴ける企画のほうに比較的多く足を運んでいた。



 「おい、ナナ、」
 「はっ、はいっ!?」
 担任が帰りを待ちわびていることなどお構いなしに、彼女のクラスの企画であるメイド喫茶の席を堂々と陣取った薔は、執事の格好ながらもご主人さま気質を存分に発揮させた。

 「もうすぐ昼だろ?何か食うもん持って来いよ。」








 やっと、自分だけのご主人様をおもてなしできるのだと感極まったナナは、焦らしの時間中ではあるが元気よくお応えした。

 「かしこまりました、ご主人様!」

 醐留権先生はまだまだ、休憩には入れなくなった。




 執事さまなのになにあの自然なご主人様……と思った他のお客様がた(メイド喫茶に於いてはご主人様)は、羨望の眼差しを超絶美形に送っている。
 なんだか色々と面白いために、こけしちゃんは終始にっこにこである。
 できることなら眼鏡執事と俺様執事のカップルでメイド喫茶のテーブルを囲んでほしかったけれど、そこはまあ日々培ってきた妄想力でいくらでもどこまでもめくるめかせることができていた。

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