※※第252話:Make Love(in Pool).151








 最上階でも、ナナは大丈夫だった。
 窓の外に広がるのはほとんど夜空で、高所なのだという実感がほとんど沸かない幻想的な景色も相俟り恐いという気持ちはなかった。
 ここらへんから、彼女はだんだんウキウキし始めた。

 部屋には、利用こそしないがバーカウンターまで設置されている。
 最も重要なのは無論、寝室でございますが。


 その寝室を確かめる前に、いったん2階へと降りてレストランで夕食の時間となった。







 「すっごく美味しいですーっ!もちろん、薔が作ってくださるご飯のほうが美味しいですけど!」
 「おまえはほんと、美味そうに食うな?」
 身を食べやすく解してある高級蟹なら特に無口にはならず(蟹を食べると無口になるというのはもはや定説)、ナナは料理の美味しさに感動しつつもきちんとフォローは入れて、薔は楽しげに笑っている。
 レストランの窓からは、ふたりが戯れた砂浜が夜の姿を映し出していた。
 無論ひとけはなく、ただ波音だけがゆったりと聞こえていそうだった。


 料理は美味しくても、ナナは時間が気になってしまう。
 プールは19時から22時までしか使えない、できることなら彼と一緒にプールでの時間もたっぷりと満喫したかった。
 海辺では一度中出しをされただけで、焦らされていることもあるのだし。


 まだどのようなプールかはお目にかかれていないが、ホテルの雰囲気などからして相当豪華であることはナナにも容易く想像できた。

 「……薔ってほんとうは、おいくつなんですか?」
 「おまえに年齢は偽ってねぇぞ?」
 これだけの高級ホテルを貸切状態にできてしまう彼氏の凄さに彼女はちょっと戸惑い、薔はちょっと不機嫌になる。
 年齢をかなり偽りまくっているのは、ナナのほうだけど。


 「ふざけたこと聞くんじゃねぇよ。俺はおまえと結婚できる年になんのを、辛抱強く待ってんだ、こればっかりはどうにもなんねぇからな。」
 くすっと笑った薔はテーブルを挟んだ彼女の目の前で、さらりと告げてみてから、

 「……ダメだな、やっぱ照れる……」

 照れくさそうに窓のほうへと顔を逸らした。
 耳まで、赤くしているように見える。



 ナナも真っ赤になって、彼を見つめながら思わず手を止めてしまい、

 「変な顔してんだからあんま見んじゃねぇよ、ばか……」

 視線を少し彼女へ戻した薔は照れたまま自らの台詞により拗ねた。




 「しょっ…っ、薔はわたしを、可愛さで殺したいんですか…!?」
 「俺がそんなことできるわけねぇだろ。まあ、俺はおまえの可愛さに何度も殺されかけてるけどな?」
 「えええええ!?今できそうでしたので自信を持ってくださいよおおお!」
 レストランでのディナーも、他に客はいないこともありイチャイチャ全開でいけた。
 ナナは今の彼の姿については、あわよくば動画に残しておければ良かっと思ってしまった。

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