※※第244話:Make Love(&Make Love!).15
誰かが触らないように、誰にも触れないように、
捕らえてゆく、閉じ籠めてゆく、
流れ落ちる魔性は、
…――――――赤か、白か。
こけしちゃんは醐留権に呼び出された通りに、放課後、彼の待つ数学準備室第一へと出向いた。
ちなみに、誘われた勢いで仕上げた例の小説は、ばっちりナナに貸し出してある。
教師と生徒という関係でありながら付き合っているのだから、個人的に呼ばれたとなるとこけしちゃんにはかなりの期待が膨らんでいた。
そんな乙女なりの期待を落ち着かせるためにほとんど徹夜で、自分を勝手に親友の彼氏に置き換えてシュミレーション済み(要×薔でめくるめかせ済み)である。
しかしながら、ドキドキィィのこけしちゃんに向かって、眼鏡をくいっとやった醐留権先生はさっそく切り出してきた。
「桜葉、もうすぐ期末テストだろう?わからないところは私が教えてあげるから、一緒にテスト勉強をしよう。」
と。
ムードある誘い文句がくるかと思いきや、きたのはテスト勉強のお誘いだった。
「えええぇぇっっ!?」
こけしちゃんはおっとりながらもびっくり仰天した、予定ならここは「会いたかったよ、薔(※この場合は悠香)……」がくるはずだった。
テスト勉強をするための心の準備というか道具の準備は、残念ながらできていない。
「ゾーラ先生ぇ、あたし別にぃ、わからないところがないんだけどぉぉ……」
面食らったこけしちゃんはそもそも、こつこつやっているし生まれてこのかた赤点など取ったこともないしで、自分にテスト勉強は必要ないことを素直に打ち明けた。
「そういう油断が、命取りになることもあるだろう?さあ、ここに座りたまえ。」
きっぱりと教師っぽく(?)返したゾーラ先生は、ひとまず目の前の席を引いてこけしちゃんを促す。
釈然としないこけしちゃんは黙って椅子に座ったが、予定ならここは「もう我慢も限界なんだ、今すぐ君を欲しがってもいいかい?」がくるはずだった。
そして薔は最初は嫌がるのだけどだんだんと流されてしまい……って今はそっちの世界じゃない!
「勉強道具もなぁんにもぉ、持ってきてませんぅぅ。」
いささか憤慨しつつ、こけしちゃんは醐留権を見る。
「ま、まあ、それなら私が……何とかしよう。」
彼女にニコニコと凄まれた醐留権先生は、どこか気まずそうに視線を逸らした。
この不自然さは何なのだろうと、羚亜くぅんのバイトの帰りには必ずお迎えに行っているくせにぃぃ、と考え始めたこけしちゃんはそれはそれで萌えてしまうために考えを切り替えることにした。
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