※※第202話:Make Love(&Cuteness).119







 乙女たちがこそこそと憤慨し合っている最中のことだった。

 「暮中、ちょっといいかい?」
 2ー5の教室へと数学の授業でもないのに珍しくやってきた醐留権が、ふてくされている薔へと声を掛けたのだ。
 ナナは憤りにより、こけしちゃんはなんだかんだで萌えにより、乙女たちのこっそりとした動きはぴたりと止まる。

 彼女のクラスのほうにいるだろうという予想は見事に的中した。
 成績が断トツで良い薔にテストのことでも聞いて、とにかくこけしちゃんが見ているまえで仲良くしようという魂胆でいる醐留権先生だが、

 「……あ?」

 今一番の怒りを向けている人物に声を掛けられた薔の雰囲気は、たちまちそら険しくなった。


 (おや?いつにも増して雰囲気が……)
 醐留権は思わず、一瞬怯んだ。
 ナナはじっとりと醐留権を見ていたが、こけしちゃんの瞳はもはやキラキラァァとしている。
 腐女子隊の皆さんも凝視し、周りは固唾を呑みつつ仲良し(仲良しか?)なふたりに萌え。




 「とりあえずその眼鏡ぶち割ってもいいか?」
 「どうしてそうなるんだ!?」
 そら険しい雰囲気で薔は席を立ち、醐留権は驚きのあまり眼鏡がちょっと跳ねた。

 仲良くしようと思っていたところを、一歩間違えればホラーである。
 さすがに眼鏡は……と、正しい流れについてを知っているナナは憤慨はどこへやら震え上がり、こけしちゃんはさらに瞳をキラキラァァァと輝かせる。



 「ま、まあ、眼鏡をぶち割るくらいなら…よしとしようか、他にもいくつか持っているからな。」
 「安心しろ、うまくいけば失明だ。」
 「うまくいけば失明だと!?」
 彼女のためなら眼鏡の一つや二つと思った醐留権だが、最終的に失明となれば話は別だった。
 仰天した醐留権先生はそれでもちゃっかり、こけしちゃんの輝く視線を感じてはいる。


 そんななか、

 「ったく…」

 未だそら険しい雰囲気のまんま、薔は言い放った。

 「明日26になるってのに、落ち着きの無え眼鏡だな。」









 (彼氏について詳しすぎる…!)
 腐女子隊の隊員たちはこの時点で思わずぶっ倒れた。


 「明日、26になる…?」
 比較的どころかじゅうぶんに落ち着いてはいると思われますが、脳内で今月のカレンダーや、自分が産声を上げた瞬間については親から聞いていたイメージなどで思い浮かべたゾーラ先生はようやく気づいた模様だ。

 「そうか!明日は私の誕生日だったのか!」

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