※※第202話:Make Love(&Cuteness).119
ズ――――――ン…
職員室にて朝から、醐留権は周りが心配せざるを得ないほどにうなだれていた。
今彼にとって致命的となる言葉はズバリ“既読無視”、既読無視の悪夢再びである。
(下心が見え見えの文章を送ってしまったからな…)
昨夜、こけしちゃんへのLINEのメッセージで、さりげなくデートに誘ったつもりでいたがあからさまだったかもしれないと思い始めた醐留権先生は、とりあえず彼女が見ていないところで何かしらの穴を設けてもらい入ってしまいたかった。
(もっとスマートに誘っておけば……私としたことが、情けない……)
後悔の念に駆られて止まないゾーラ先生ですが、誘うところはわりとスマートにできておりました。
ただ、自分の誕生日をすっかり忘れてしまっているからいけないんだよ!
周りの先生方も職員室に訪れた生徒たちも、醐留権先生の落ち込みようには誰も声を掛けたくても掛けられずにいる。
(これは……桜葉の前で暮中と仲良くするしか、彼女の機嫌を取り戻す方法はないのかもしれないな……)
苦悩に満ちた表情で、醐留権はそう導き出した。
彼女のことをとてもよくわかってはおりますが、未だ自分の誕生日についてはこれっぽっちも思い出せておりません。
(よし、そうと決まれば…)
意を決した醐留権は、眼鏡を光らせ立ち上がる。
やっと元気になった……と思った周りの皆さんは、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。
――――――――…
「あぁぁ、ゾーラ先生ぇのバカぁぁ…」
朝からこけしちゃんも、おっとりとうなだれていた。
「そうだよ、ほんとうに、醐留権先生はバカだよ…!」
メールであらかじめ事情を聞いていたナナは勝手に拝借している親友の隣の席にて、憤慨している。
じつに、こそこそと。
「自分の誕生日を忘れちゃうなんてぇぇ、ゾーラ先生ぇももうぅ、年相応以上の物忘れが始まっちゃったのかなぁぁ?」
「そうかもしれないよ、こけしちゃん…!」
ナナはこけしちゃんをなだめるためにも、ひたすら共感、肯定をする。
最近この物語ではちょいちょい出てくるようになりました、年相応以上の物忘れ。
「………………。」
ナナが落胆している親友にばかり構っているため、彼女の席に座って待っている薔の機嫌の悪さは半端なかった。
今現在彼の怒りはすべて、誕生日を忘れている彼女の親友の彼氏へと向かっていた。
ギャラリーさん方やなんかは、かわいい……とか思いながらときめいちゃっております。
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