※※第231話:Make Love(&Wedding).137
「遅くなり申シタ〜!アイムソーリ〜、ヒゲソーリ〜!」
「ヒゲソーリ〜!」
突然、両家揃って用意されている控え室(とは言ってもほとんどは葛篭家の関係者だったが)に、何とも胡散臭い上に寒い駄洒落までくっつけた年配の男女の声が響き渡った。
皆、ウェルカムドリンクを飲んでいた手を止める。
「きっ、来ちゃったよ…!」
友人スピーチの緊張も高まるなか、ナナ父は青ざめ、
「相変わらず、胡散臭いわね。」
ナナ母は特にどうと言うこともなくウェルカムドリンクを飲んでいた。
「ビューティフォー実穂子サンの〜、ご両親はどちらニ……」
その年配の男女は、少女漫画で中世ヨーロッパを舞台にした作品に貴族の服装としていかにも多出していそうな格好をしており、キョロキョロと控え室を見回してから、
「OH〜!じつになんてこったいワンダフォーッ!」
ふたりして何かを発見したようで、同時に声を張り上げた。
この内容を同時に叫べたところが、やはり胡散臭い。
そしてふたりはハリー以上に、鼻が高かった。
肝心の葛篭の両親は、ポカンとしている。
「まことに最高にビューティフォーデスネ〜!ワンダフォービューティフォ〜!ジャパニーズビューティフォーデスヨ〜!」
鼻息を荒くした言うまでもなくハリーの両親は、まっしぐらにナナと薔へと向かってきた。
「ひぇぇぇえええ…!」
ナナはあまりの胡散臭さに、どさくさ紛れで彼氏へと抱きつき、
「おい、触んなよ?俺のこいつは確かに最高にきれいで可愛いけどな…」
薔は彼女を護ろうと、新郎の両親を威嚇した。
次の瞬間、
ふわっ…
ハリーの両親は薔の黒髪へと、それはそれは大事そうに触れてきたのである。
「手触りも最高デース!こちらのべっぴんさんハ〜、ヤマトナデシコですヨネ〜!?」
「快感デスネ〜!腰砕けマース!」
「………………。」
ハリーの両親はまさに興奮の坩堝で、勝手に髪を触られた薔は殺気立った。
それぞれのお尻を噛ませるためにも、花子と豆にも列席させるべきだったかもしれない。
しかしながら、彼氏以上に殺気立ったのは、
「こら――――――――っ!」
ふたりを蹴飛ばしたヒロインだった。
怒髪天を衝く勢いで、ナナは新郎の両親を蹴飛ばした。
「何をやってるんだーっ!薔はわたしの薔なんです、勝手に触るんじゃない!触っていいのはわたしだけなので!」
怒りながら諭す彼女を見て、
「……おまえの言う通りだな。」
薔はやはり、ムラッときてしまっていた。
抱きつかれていると、否応なしに胸も当たってきますので。
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