※※第231話:Make Love(&Wedding).137
…――――暗澹が、手招きしている、微笑んでいる。
悪夢はゆっくりと、影を伸ばす。
だからふたりは強く、手を取りあった。
「ハリーさんと葛篭先生に、お祝いのメッセージをお願いします!」
ナナはデジカメを手に、女性の列席者へと声を掛けていた。
寝不足なんて何のその、朝までエッチの賜物か、ナナはお肌の調子も何もかも絶好調でした。
じつは、メインカップルの余興は、まだ完成には至っていなかったのである。
主に新郎新婦にインタビューをする専属のカメラマンさんも、せっせとお仕事をしております。
それとは別に、ナナと薔はあくまで余興のためのインタビューに共に勤しんでいた。
「おめでとうございます、お二人とも、末永くお幸せに…!」
と、おそらく葛篭の親戚辺りだと思われる女性は、デジカメを手にインタビューをしてくる女の子の隣にいるドイケメンにドキドキしながら当たり障りのない祝福メッセージを述べた。
この頃、ハリーと葛篭先生は、結婚式のリハーサルに挑むべく準備をしているところだった。
「ありがとうございます!」
きちんとお礼を返し、デジカメを回してみたナナさんは、
「あれ!?醐留権先生!?」
「や、やあ……」
眼鏡を光らせた親友の彼氏の姿に、びっくり仰天した。
同僚として列席した醐留権は、受け持っている生徒(つまりは2-1から参加している唯一の生徒)のそら険しい雰囲気に、とりあえず眼鏡越しの視線を逸らしたくなっている。
「おい、男の場合は俺がインタビューするっつったろ?」
「あ、すみません……つい、びっくりしてしまいまして……」
薔はナナからデジカメを奪い取り、醐留権はできることならこけしちゃんと一緒に参加したかったと心底思っていた。
こけしちゃんは日曜日ですので、BLかお勉強か、やはりBLに励んでいる最中だと思われます。
薔が醐留権先生にインタビューと言ったら……こけし姉さんも拝みたかったろうに。
「では……、この度はご結婚、おめでとうございます。お二人の人生最良の門出を、心からおよろこ」
「あんた教師のくせにメッセージがありきたりだな、もっと他にねぇのか?」
「なぜ私にだけそこまでのものを求めるんだ!?おまけに私の受け持ちは、数学だぞ!?」
改まった醐留権は、やはり当たり障りのないお祝いメッセージを述べようとしたのだが、却下された。
眺めている周りは、面白くてつい笑ってしまった。
「あああなたっ…!生お師匠さまよ、生お師匠さまがいらっしゃるわよ…!美しすぎる…!どうしましょう…!?」
「おお落ち着くんだ、母さん…!確かに生お師匠さまだな、初めて生で拝見したが、お美しいなあ……」
挨拶を済ませている葛篭の両親は、生で初めてお目にかかれたハリーの美麗なるお師匠さま(※非公認)に大興奮していた。
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