※※第229話:Make Love(on Her bed).135








 「ごめんなさいね?雅之が突然残業になってしまって。」
 真っ茶色のエプロンをつけたナナ母は、リビングにて待機していた娘夫婦(ではまだないけど)に、ほうじ茶と大きめの菓子器に山盛りとなったサッポロポテトつぶつぶベジタブルを持ってきてくれた。

 「お母さん、お菓子こぼれそうで取りにくいよ……」
 山盛りのスナック菓子に困惑する娘と、
 「お父さんも大変ですね。」
 “お父さん”を使いたいがために、微笑む娘の旦那(ではまだないけど)。


 (ナナ、いい加減写真はどうなっているの?)
 心で定番を問いかけたナナ母は、一度ごっそりとサッポロポテトつぶつぶベジタブルを鷲掴みにしてから、2本ずつくらいのペースでサクサクとかじり始めた。
 どうやら今のお気に入りらしい。


 じつはこの日ナナと薔は、ハリーの結婚式で友人スピーチを務めるナナ父の、挨拶の原稿は大丈夫かどうかについての確認のために学校の帰りにナナ宅を訪れていた。
 部活はちょっと早めに、切り上げさせた。
 ハリーは仕事終わりの葛篭先生とデートのようで(恋人同士としてデートできる時間はかなり限られてきておりますので)、まだ帰ってきてはいない。


 ナナは母と同じやり方でサッポロポテトつぶつぶベジタブルを食べてみようと試みたのだが、母が上部を鷲掴みにしたせいでさらに崩れ易そうになっており、とりあえず止めておいた。
 なんだか迷っている様子の彼女の姿を見ながら、可愛いなとか薔は思っている。

 お菓子はいったん諦めて、ナナはほうじ茶の入った湯飲みを手に取り飲もうとしたまさにそのとき、

 「ナナ、」

 サクサクとお菓子を頬張っていた母が、さらりと口にした。

 「何百年も成長しないと思っていたけど、あなた胸が大きくなったわね。」









 ブ――――――ッ!

 とナナは、ほうじ茶をもし口に含んでいたら豪快に吹き出してしまっただろう。
 大きくさせた張本人は、涼しい顔をして隣に座っている。

 「お母さん!へんなこと言わないでよ!」
 真っ赤になったナナは、慌ててブラウスのうえから胸に両手を当てて、
 「お母さんが言う分にはへんなことじゃないでしょう?娘の成長が嬉しいだけの話よ?」
 ナナ母はまたしてもごっそりと、サッポロポテトつぶつぶベジタブルを鷲掴みにする。

 いつぞやの山梨での温泉旅行の際にも、こけしちゃんと愛羅に同じことを言われたナナは胸が大きくなった理由を知ってしまっているために、耳まで赤くして俯き、

 「そうだ、雅之の帰りは遅くなるでしょうから、良かったらうちで夕食を食べて行くといいわ。薔くん、ナナと一緒にこの子の部屋で待っててくれるかしら?」
 「わかりました。」
 「えええええ!?」

 ナナ母の提案で、ナナ父が帰ってきて皆で夕食にするまでのあいだ、ナナは薔と一緒に(元?)マイルームにて待機することとなった。

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