※※第226話:Make Love(&Privily).133















 「えっと、これとこれと、あとこれがいいです!」
 月曜日の朝、登校途中でのこと。
 ナナは立ち寄ったコンビニにて、お昼に食べる予定のパンを3つ手に取った。

 「おい、ちゃんとシールが付いてんのかを見て選べよ、こいつは違ぇだろうが。」
 「あっ、すみません、そうでした…!」
 薔は製造会社が違う一つを指差して彼女を諭し、ナナは慌ててそれを棚に戻した。
 パン選びはもちろんシールを集めてザザえもんの浮き輪をゲットするためなので、シールが付いてくるフジザキパン(なんだかごめん)を選ばなければならないのである。
 朝からVIPの来店に、アルバイターの元チーフとベンジャミンは縮こまれるところまで縮こまり怯えている。



 ザザえもんの浮き輪は、30点ぶんを集めて専用のシートに貼ってレジへと提出すればもれなくもらえるという品であり、30点ぶんを集めるべくふたりはパン食にしばらくは励むかと思われた。


 ところが、

 「薔ももちろん、ザザえもんの浮き輪欲しいですよね?」
 「あ?」

 ナナは輝く瞳で、彼へと確認してきたのだ。

 「俺は別に要らねぇよ。」
 パンの棚へと視線を戻した薔は、泳ぎは難なく得意すぎることとザザえもんの浮き輪には特に興味がないためきっぱりと返した。
 彼女が欲しがっているから、彼はとにかく30点ぶんを集めればいいと思っていたのである。



 すると、おんなじものが欲しかったようで、しゅんとしてしまったナナは小さな声で返した。

 「わたし……薔とお揃いがいいです……」

 と。





 「………………。」
 “お揃い”という魔法の言葉を彼女自身が引っ張り出してきたために、可愛いなとか思った薔は一瞬黙り込んだ。
 「薔もおんなじのが欲しいのだと……思ってたんですけど……」
 しゅんとしたままナナは、無自覚に追い討ちをかける。


 「……仕方ねぇな、60点分集めるか、」
 「しょっ、薔ーっ!」
 よって、30点ぶんで足りるだろうと思われていたパンのシールの点数は、倍の60点ぶんが目標とされた。
 フジザキパン(やっぱりごめん)さんにとっては、ありがたい話である。

 「あとおまえな、今みてぇな可愛さは俺の前だけで見せろ、こんなとこで無闇に見せんじゃねぇよ。」
 「かっ、かしこまりました…!」
 言い聞かせられたナナは敬礼をして見せて、ひとまず5点ぶんはこのときの買い物で確保できた。
 先は意外と長いかもしれませんが、目標に向かってコツコツとふたりでシールを集めてゆくのも楽しいことかもしれませんね。

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