※※第224話:Make Love(&Internal).131
(やっぱり真依ちゃんは、いい嫁さんになるわ……)
高みの見物を決め込んでいるメンバーたちは、どんなときでも真依は屡薇をフォローしてくれそうだと、安泰した。
おそらく大先輩も、これにはにっこにこが止まらないことと思われる。
「いえ、わかってくだされば、それでいいんです。ゲイには優しくお願いします。」
「はい……」
泣いている大女優さんをなぐさめながら、真依は下げていたバッグをがさごそやると、
「あと、じつは大ファンなんです!サインください!」
スタジオに来る際には念のため持ち歩いていたペンと色紙を取り出し、サインを求めた。
「ええ、もちろん……」
大女優(←名前は……)さんはにっこり笑うと、快くサインを書いてくれた。
「テレビで観るよりずっとお綺麗ですね!もうあたし、“検察庁の怠け者シリーズ”は欠かさず観ているんです!いざっていうときにしか頼りにならないあの感じを、よくあそこまで巧く演じられているなあって思いながら、いつも引き込まれてます!」
検察庁の怠け者シリーズは観てみたいんだか観てみたくないんだか高視聴率なのかがよくわからないのだが、真依はとたんに興奮し始めた。
「ウフフ……同性に好意を寄せられるのって、とても素敵なことなのね、教えてくれてありがとう。」
「こちらこそ、ありがとうございます!」
真依に食いつかれている大女優さんとやらは、身をもって同性に好意を寄せられるありがたさを噛みしめたようで、色紙に立派なサインをもらった真依はさらに興奮しまじまじとそれを眺めた。
「いきなりすみませんでした、初日さんとどうぞお幸せに……」
そして再びサングラスをかけた大女優さんは、口許に穏やかな笑みを浮かべながら手を振ってマネージャーさんと共にスタジオを後にした。
スタッフさん等はちょっとよくわからずにいたが、メンバーたちは懸命に大笑いを堪えていた。
「……真依さん、俺のサインは欲しくねぇの?」
「えええっと、屡薇くんのは、まだいいよ!」
「ああ、そうなんだ……」
しょぼんとする屡薇はずっとこの場におりました。
未だに大女優のサインを眺めている彼女が腐女子であったことに、ここは感謝をするべきなのか、はたまた。
屡薇は改めて、失意体前屈(orz←これ)をやりたくなっていたのだけど、サインとペンをバッグの中へ仕舞った真依は、
バシバシッ…!
といきなり、彼の腕を払うように何度も叩いてきた。
「うわっ!何!?いきなり!」
びっくりした屡薇は、やや体をすくめながら彼女の突然の行動に戸惑いもした。
「埃ついてた。」
しかしながら、仏頂面でいた真依がふいっと顔を逸らしてスタジオの隅へと向かうときに、ちゃんと気づいてしまった。
彼女は大女優が掴んだ部分を、何度も何度も振り払うように叩いていたのだ。
(俺、真依さんのこと幸せにするよ――――――っ!)
屡薇のしょぼんは一気に回復した。
初日は後で一発くらいぶん殴りたい気分だが、彼女の可愛らしい一面が見られたので良しとするか。
面白い寸劇が見られたメンバーたちも、楽しい気分でリハーサルを再開できそうだ。
……屡薇と真依のラブアフェアも、次回はばっちり描けそうですね。
…――The trouble which can be evaded will be an advance.
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