※※第217話:Make Love(&Seek).126













 ドキドキもひとしきりの萌は昼休みに、無地の手紙を手に放送室へと向かっていた。
 よくよく考えてみれば、放送室を指定されたのも何だか意味深ではあるのだが、心の準備はどうやってもできそうになかったために萎縮をしながらも手紙で伝えられた通りに放送室へ向かうしかなかった。

 時々わけのわからない雄叫びを上げたりしている萌の姿はやはり、挙動不審を通り越してホラーチックとなっている。




 「あっ、あの子、ちゃんと来やがったね!」
 「ほんとだ!」
 愛羅と羚亜はこそこそと廊下の影から、放送室の前を見張っており、
 「うんぅぅ、面白いことになりそうぅ。」
 にっこにこのこけしちゃんも、バカップルと一緒になって見張りに徹していた。
 是非ともゾーラ先生にも揃ってほしいところだったが、公務があるためお昼休みも多忙で眼鏡越しに残念そうな視線を送り今回は辞退した。
 しかしながら、教師代表として許可を下ろすという役は快く引き受けた。

 さんにんが見守っていると、放送室の三歩ほど手前で立ち止まった萌はやたらと周りを気にするようにキョロキョロし始めた。
 否、キョロキョロという表現は相応しくないほどのかなり高速な首の振りようで、何かの儀式なのかな(ぁぁ)?とさんにんは思ったりした。

 そのうちに萌は放送室へと向かって、三歩進んでドアノブをちょっと触ってから、二歩下がり、また首を高速で振り始めた。
 三歩進んで二歩下がってはおりますけれど、つけた足跡にきれいな花は到底咲きそうもないほどの見たところは変な儀式である(※意味がわからないかたは名曲“365歩のマーチ”の歌詞をご参照に)。


 「なんか、見ててイライラしてきたな……いつまであれやってるんだろ?」
 「お昼休みも無限にあるわけじゃないんだし……」
 バカップルはそろそろ、辛抱ならなくなっている様子だ。
 羚亜よ、ごもっともだがお昼休みが無限にあったらそもそも夕食にありつけないよ。

 ここで、だいたいの話の流れをナナからとバカップルから聞いていたこけしちゃんは、女の子を否応なしに放送室へと飛び込ませることができそうな一言をニコニコと導きだした。

 こけしちゃんはさっそく、廊下の影から萌へと聞こえるようにわざとらしく声を出してみる。

 「あぁぁ、薔くぅんだぁぁっ。」










 「ぎゃあああ…!畏れ多いっ!」
 ドキドキのあまりパニック状態に陥った萌は、放送室にいらっしゃるのではないかという期待を持ちつつここまでやっとこさ辿り着いたはずなのだが、慌てふためき目の前の放送室のドアを開け飛び込んでいった。
 羚亜と愛羅は感心しながら、にっこにこのこけしちゃんを眺めていた。

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