※※第205話:Make Love(&Beloved).120













 …――――罪深く召しませ。

 赤く熟れた傷口を。















 「屡薇くん、」
 控え室の椅子に座って、仏頂面の真依はすぐ目の前に同じく座っている彼へと尋ねた。

 「何であたしたち、控え室にふたりっきりになってるの?」







 彼に呼び出されるまま日曜日の夜、スタジオに訪れた真依はてっきりここではリハーサルの見学をさせてもらえると思っていたのだ。
 ところが、入り口で出迎えてくれた屡薇は真っ直ぐ彼女を、今は誰にも使われていない控え室へと案内したのである。
 しんとした控え室にふたりっきりの状態に、やけに高まる緊張を隠すために真依は仏頂面を通していた。

 「真依さん、あのさ…」
 真剣な眼差しで息を呑んだ屡薇は、テーブルの上に置かれていた一本の瓶を手に取る。

 「“俺のマカ一本”飲んでもいい?精力はマジで有り余ってんだけど。」
 「はぁぁぁぁぁあああ!?」
 どうやら屡薇はなんだかんだで、ボーカルくんの余計なお世話は受け入れたようだ。
 呆れることもできず、真依はただただ真っ赤となる。


 「屡薇くんてたまにほんと、ムードないよね!?マグナムが火ぃ吹くとかさ、LINEでエロいこと言ってこないでよ!」
 「あっ、真依さん…そんなこと言われると俺のマグナムが……」
 「火ぃ吹かないでよ!?」
 真依は説教に走っているのか、とにかく真っ赤になって憤慨し、はっきりと言葉にされた屡薇は思わずマグナムとやらをズキンとさせてしまったようだ。



 「やっぱマカはいいや……」
 溜め息混じりに、屡薇は“俺のマカ一本”をもとあった場所に戻す。
 真依は身構えようとしたのだけど、その隙を与えられないまま、

 「チューしてくれるんでしょ?」

 きゅっと片手を取られてしまった。



 真依としては、吸血行為に至らせるための誘惑として、登場させた台詞だったのだけど。

 「もう俺、限界……真依さんとエッチしたい……」
 屡薇は彼女の手を自分の口元へと持っていき、ゆびにキスをして上目遣いに確かめてきた。

 「ここですんのは…イヤ?」









 「だっ、だって……ここ、控え室……」
 キスをされるゆびは瞬時にいやらしい熱を持つ。
 戸惑う真依の躰は、甘くふるえて、正直な反応を見せてしまう。
 「大丈夫だよ?しばらくは誰も来ねぇし、」
 ゆびからくちびるを離すと、手は離さないまま引っ張って、くちびるにくちびるを寄せて、

 「ね?だからここでしちゃおうよ…」

 微笑んだ屡薇は彼女のくちびるを奪った。




 こんな展開になるはずがないと、真依は思っていたわけではない。
 期待は、していた、だからこそしていないと思い込もうとしていた。
 彼女はその罠に、きっと自ら嵌まりにきたのだ。

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