※※第204話:Make Love(&Make Love!).11














 この愛に穢れよう、この愛を貫こう。
 恐ろしくとも、狂おしくとも。














 こけしちゃんと醐留権は、彼が予約を入れてあったホテルへと向かっていた。
 自分の誕生日だが、ゾーラ先生は下心からもそこらへんは抜かりなかったようだ。
 久しぶりの甘い夜へと互いに想いを馳せているからか、しばし沈黙がつづいていたがまったく気まずくはなかった。
 とにかくなんだか、照れくさい。

 気持ちは逸るばかりだけれど安全運転で走ってゆく車窓を、夜の色に包まれてゆく街がゆっくりと流れていた。
 助手席でちょっと恥ずかしげに俯くこけしちゃんはなかなか大きめの箱を両手で支え、膝のうえに乗せていた。
 箱はひんやりとして、火照りゆく躰には心地がよい。
 ケーキをしっかり守り抜いたゲイちゃんは、今夜はご褒美として司のハンバーグを狙っていた。



 「ゾーラ先生ぇ、」
 「何だい?」
 俯いていたこけしちゃんだが、ふと思い出して彼へと尋ねてみた。

 「今日は女の子にモテモテでぇぇ、嬉しかったでしょうぅ?」

 と。




 「は?」
 運転中に意外な問いを投げ掛けられた醐留権は、眼鏡越しに目をぱちくりさせ、
 「あれはちょぉっと妬けたかなぁぁ…」
 ほんとうはちょっとどころではないこけしちゃんは、口を尖らす。


 「いや、桜葉……私はじつは、かなり複雑な心持ちでいたのだが、」
 ちらちらと彼女へ視線をやりながら、ヤキモチを妬いてくれたことには内心かなり喜んでいるゾーラ先生は、正直に明かした。

 「女の子より男の子のほうが、良かったなと終始思ってしまっていたよ。」




 ……それだとこけしちゃんが確実に悦ぶからね。





 「えぇぇぇ?そうなのぉぉ?」
 顔を上げたこけしちゃんの瞳は、とたんにパアァァと輝き始めた。

 「だからぁぁ、教室で薔くぅんと羚亜くぅんをぉ、あつぅぅく抱きしめていたのぉぉ?」
 「熱く抱きしめて……?あ、あぁ、まぁ、そういうことにしておこうか……」
 彼女の機嫌が直ったようなので、醐留権はそれでよしとした。
 今日は自分の誕生日なのに。

 ホテルに向かうために制服から着替えたこけしちゃんは、以前に彼氏が贈ってくれた白のミディアムドレスを着てにっこにことしている。






 本日選んだホテルには、地上にも地下にも駐車場があった。
 醐留権は迷わず、地下の駐車場へと進んでゆく。
 彼女がケーキを抱えていることもあり、ゆっくり、慎重に車体は奥まった場所を目指して行った。

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