※※第198話:Make Love(&Pornography).116
時刻は残照を空に浮かべる頃。
「どうしよう……何か初めての俺には一日だけとは言っても役不足な気がしてきた……」
アルバイトに誘ったのは羚亜であるが、面接直前になって緊張してきたようだ。
「お前のそれは力不足だ、接客すんなら日本語ちゃんと勉強しろ。」
堂々と返した薔はやはり、微塵も緊張などしていないようだ。
面接なんか早く済ませて、彼は彼女ととにかくイチャつきたいのである。
ここで一部明らかとなりましたが、どうやらアルバイトは接客業のようである。
「薔くん先生…!頼もしい…!」
瞳を輝かせた羚亜は、薔へと駆け寄る。
「勝手な呼び方すんじゃねぇよ。」
「俺、ちょっと緊張解けてきた…!」
途中まではバスで来たふたりは、着々と目的地へと向かっていた。
――――――――…
(ううぅぅん…)
お菓子のレシピ本をニコニコと眺め、エプロンを着けたこけしちゃんは困っていた。
「ゾーラ先生ぇってぇ、ショートケーキとチョコレートケーキぃ、どっちのほうが好きなんだろうぅぅ?」
本番で失敗しないようにと、何度か彼の誕生日用のケーキを焼いてみようと思い立ったこけしちゃんだったが(部活は早めに切り上げさせてもらった)、生クリーム系にするかチョコレート系にするかで迷っていた。
今さら本人に聞くのもなんだか、わざとらしくて気が引ける。
“おれはなんとなく予想できてるぜ、”
出来上がった際には真っ先に試食してやろうと意気込むゲイちゃんは、食卓のパパうえの椅子をちゃっかり陣取っている。
パラパラと本をめくったりして、悩んでいたこけしちゃんは、
「あぁぁ、」
ふと、パアァァと瞳を輝かせた。
「ショートケーキだぁぁっ。」
と。
「あたしったらバカぁぁぁ…」
急にお花を飛ばせ始めたこけしちゃんは、いそいそと材料の準備に取りかかる。
ショートケーキ……おそらく語呂合わせで腐的に解決いたしました。
“ほらな、”
お見通しだったゲイちゃんは、チョコレートケーキよりショートケーキ派であるため万々歳である。
「姉ちゃん、おれも手伝う!」
「出来たら慎くぅんに届けてくるぅぅ?」
「えーっ!?めんどくさい!」
こけしちゃんとしては是非とも慎に届けてあわよくばとなってほしいところであるが、司は面倒くさがった。
慎くんは今頃、くしゃみをしちゃっているかもしれません。
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