※※第195話:Make Love(&Sex aid).14







 「ナナっ!」
 「あっ、ちょっと、どうしたの?」
 立ち上がり、彼女を必死に呼び止める薔の声がスタジオへと響いた。
 周りは一斉にそちらを見る。

 「薔…?」
 彼に呼ばれたナナは、振り向くこともせずそちらへすぐに行こうとした。

 「君はさ、どうやったって、彼とは違う生き物なんだよ?」
 お構いなしに、爪を研ぎ澄ませた初日は手を伸ばし、ナナの首筋へと滑らせた。
 ビクッとなったナナの首筋を、細い傷が引いて、彼とおんなじ色の赤い血液が滴り落ちる。

 「こんな傷がついても、すぐに消えちゃうん」










 ガッッ――――――…!!

 だから、と言い終えぬ前に、ぶん殴られた初日の体は思い切りスタジオの壁へと叩きつけられた。
 壁には亀裂が入るほどで、埃が勢いによってぱらぱらと落ちてくる。

 周りは何が何だか茫然、ナナの首筋の傷はもう消えてしまっている。







 「謝って済む事じゃねぇが、謝れ…」
 初日を見下ろし言い放った薔の口元には、すでに施されていた鋭い牙が光っていた。
 こうなってしまったら、ナナ以外誰も彼を止めることはできない。
 “それ”を目醒めさせたのは、鮮やかな彼女の血液であるのだから。


 「なっ、何をするんだ!?顔に…!僕はアーティストだぞ!?」
 ヴァンパイアだというのに、ぶん殴られた頬にはずっと激痛が走っているため、顔を上げた初日は叫ぶ。

 「そんなん知るか、」
 口元に牙を覗かせる薔の瞳は、刹那だったが赤い光を放ち、初日を威嚇した。
 ゾワッとした初日はもう、虚勢を張ることができなくなる。


 (しょ…っ、薔…っ!?)
 慌てふためくナナだが、今回は相手がヴァンパイアである初日ということもあり、とにかく彼氏の狂気にキュンキュンしちゃっていた。



 「あれって、もしかして…」
 ヴァンパイアとF・B・Dの関係について、思い当たる節がある屡薇は息を呑み、安心させるため真依へと駆け寄った。



 この場には立派なヴァンパイアも、立派なハーフもいるのだけど、

 「俺の大切なナナを傷つけた時点で、てめえはアーティストでも何でもねえ、ただのクズにも値しねえ、」

 最もヴァンパイアっぽいのは、人間であるこのひとでした。


 「早くナナに謝れ、制裁はそれからだ……」
















  …――She has to stop him!

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