※※第191話:Make Love(&Sex aid).13












 傷つけたくない。
 泣かせたくない。
 そんなものは全て欺瞞だ。

 傷つけたいし、泣かせたい。

 誰にも触れさせたくはない。















 ゴールデンウィーク明け、木曜日の朝のこと。

 「皆さぁん、いいですかぁぁ?」
 コホォンとひとつ咳払いをしたこけしちゃんは、おっとりニコニコと、でも畏まって言いました。

 「本日はぁ、BLTの“T”についてぇ、議論し合ってみたいと思いますぅぅ。」

 と。




 「とまらない。」
 「たまらない。」
 「テンダネス。」
 「“ち”の頭文字はTでいいの?それともC?」
 一般的なベーコンとレタスについては議論し合わなくていいのか、腐女子隊の隊員たちは思いついた言葉を次々と口にしてみた。

 「“ち”こそTでいくべきよねぇぇ。」
 にっこにこと答えたこけしちゃんは、しっかりと大学ノートに隊員たちの言葉を記している。


 隊長と隊員たちが和気藹々と本来ならベーコンレタストマトについて議論し合うなか、副隊長は不参加というわけでは決してなく、

 ぷるぷるぷるぷるっ…

 とふるえるナナは真剣になって、たまに奇声を上げたりしながらこけしちゃんに渡された漫画の原稿に目を通していた、目が皿になるくらいに。









 漫画の舞台は男子校で、絵柄は思いっきりBL仕様(ベーコンレタス仕様ではない)となっていた。
 が、漫画の登場人物は皆、ナナが「あれ!?」と思ってしまうキャラクターばかりだった。
 主人公・要先生(※醐留権先生によく似ている上にやたらと意地悪い)に言い寄られている生徒・薔(※大好きすぎる最愛の彼氏によく似ている上にいつもと違う感じでたいそう色っぽい)が特に「あれれれれれれれ!?」なんてものではないのである。



 『この学校に赴任してきたときからずっと、私は君のことを狙っていたんだ…』
 ひとけのない放課後の教室にて、まだまだ新米教師・要は、受け(←あ)持ちの生徒である薔へと迫った。

 『あ…っ、ばか…っ、やめろよっ…』
 耳もとへキスをされてしまい高揚する薔だが、必死になって要を押し退けようとしている。


 ガタンッ!

 『もう止まらないのだよ、君に一度……触れてしまったら……』
 『ん…っやっ、あ…っ、離せって…っ、』
 机の上に無理矢理押し倒されてしまった薔の制服を、要先生が何かゴソゴソやっている。

 『何だ、ちゃんと感じているじゃないか…』
 『ばか…っ、どこ触ってんだよ…っ、』

 放課後の教室で、重なるふたりのシルエット。

 『あっ…あ、それ…っ、…――――やだ…っ、』

[ 405/537 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る