※※第186話:Make Love(&Spume).108







 ナナはおでこの音に思わずビクッとなったが、

 「……仕方ねぇな、教えてやるか、」

 意外にもか、薔はすんなり引き受けてくれる様子である。
 明日から大型連休ということより何より、彼が引き受けてくれた理由はやはりこれしかございませんでした。

 「俺の嫁の父親の、親友の頼みだからな。」
 「ぎゃわあああ!恥ずかしすぎるんで、そんな表現やめてくださいよーっ!」
 「やだ。」

 ナナはもう、真っ赤っか。
 薔は“マサの娘サンの旦那サン”が何気にお気に入りのようだ。


 「HAHAHA〜!仲良し夫婦デスネ〜!」
 今度はおでこを赤くして、ハリーは陽気に笑っている。





 ここで、恥ずかしさのあまりナナさんは、

 「ところで、エクストリームアイロニングとはどういったものなんですか!?」

 じつに初歩的な質問を投げ掛けてみた。


 「とりあえず、一歩間違えれば死ぬようなとこでアイロン掛けすりゃいいんじゃねーのか?」
 さらりと返した薔は、豆を膝の上に乗せ、スマホ(りんごのほう)を取り出し検索し始める。
 やきもちを妬いた花子は思い切りご主人さまへと寄り添う。

 「なるほどーっ!」
 「さすが、お詳しいデスネ〜!」
 だいぶ曖昧な返事にも拘わらず、生徒たちは歓喜に満ちた。



 「家事が出来る男は好感度も上がるからな、」
 「そこまで見越してくださってたのデスカ〜!ワタクシ感動デース!」

 ホロリとするハリーは、さらにうまく丸め込まれてゆく。

 「すごいです……薔……」
 ナナは琴線に触れられてしまったようだ。


 実際にYouTubeなどで動画でも観てみればいいものを、

 「おい、俺の嫁、」
 「ぎゃわあああ!?なんでございましょううう!?」

 早くも検索を済ませた薔は花子をなでなでしながら、照れくささのあまり耳から煙が上がりそうなナナへとこんなことを命じてきた。

 「まずはおまえがこいつに、アイロンの掛け方教えてやれ。」







 「わたくし教えられるほど、アイロンなんて掛けたことございませんが!?」
 びっくり仰天のナナは、焦る。
 「俺の嫁なら何とかなるだろ。」
 落ち着きはらって言い聞かせた薔は、今夜はどこまでも“俺の嫁”でいきたいらしい。

 「もうそれやめてくださいーっ!」
 「照れんなよ、可愛いな。」
 「きゃわあああああ…!」

 イチャつきだした、ふたりの前、

 「ワタクシここに存在してますデショウカ〜?」

 明るく笑うハリーは存在を忘れられている感が否めない。

[ 330/537 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る