※※第186話:Make Love(&Spume).108













 多くのかたがたが明日から5月の大型連休に入るという、土曜日の夜のこと。

 SHIKUSHIKU…

 ナナと薔と花子とたまに豆が暮らす愛の巣の、リビングのソファの前にこぢんまりと座って、いずれ義母とのやりとりについて話し終えたハリーが泣いていた。
 胡散臭いため、一見嘘泣きのようであるところもハリーの長所である。



 「あの、ハリーさん、ティッシュをどうぞ…」
 招き入れてしまったナナは鬱陶しいなと思いながらも、テーブルを挟んで向かい合っている鼻おじさんへとティッシュを箱ごと差し出した。
 ナナの隣に寄り添う花子に豆が寄り添っている。
 キッチンにて夕食の支度に取りかかっている薔の機嫌はたちまち悪くなる。
 前回の心意気はどこに行ってしまったんだヒロインよ、と言いたいところであるが来客中でもあるためしばらく様子を見ることにしよう。


 「恐れ入りバーズ…」
 高い鼻を赤くしながらティッシュを一組引き抜いたハリーは、大きな音を立てて鼻をかんでから、振り絞るように言葉にし始めた。

 「どうしてくれるんデスカ〜、マサの娘サンの旦那サーン…」








 「ハハハハハリーさん!?」
 照れるナナは真っ赤。
 薔の機嫌は回復する。

 「ワタクシ〜、エクストリームアイロニングなど一度もしたことないデース…」
 ハリーはもう一組、ティッシュを引き抜いて鼻をかむ。

 「趣味は除霊だと言いますノニ〜……」
 しかしながら、趣味が除霊だと言うのならエクストリームアイロニングにしておいたほうが結果は良かった気がしてならない。
 「ひぇえ…!変な趣味…!」
 正直に述べたナナは、青ざめ隣の花子を抱き寄せた。
 負けじと豆は花子にじゃれつく。


 そこへ、

 「おい、」

 夕食の支度が一段落した薔が、ハリーを見下ろし堂々とした声をかけてきた。

 「いつもはほとんど何も考えてねぇくせに、こんな時だけ弱気になってんじゃねーよ。」









 「OHH〜、それもそうデース!ポジティブシンキングデスネ〜!」
 ハリーはすぐさま瞳を輝かせ、うまく丸め込まれた。

 「花子ちゃん、ご主人さまかっこいいね…」
 「ワゥン…」
 乙女たちはうっとりと隣に立つ薔を見上げ、豆は今度は薔へとじゃれつき始める。
 彼はひょいと豆を抱き上げると、乙女たちの隣に並んで座った。


 すると、

 「マサの娘サンの旦那サマ、ワタクシに是非とも、エクストリームアイロニングを教えてくだサーイ!」

 テーブルに両手を突いたハリーが、突然、薔へと頭を下げたのだ。
 ゴン!と、おでこはテーブルに当たりなかなか痛々しい音を上げた。

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