※※第183話:Make Love(&Vehemence).106








 夕闇に包まれてゆく頃、建物には様々な明かりが灯りだし、ナナと薔は花子と豆のお散歩に出かけた。
 屡薇はバンドのツアーがあるため豆は約二週間、花子が預かることとなっている。
 お散歩のあいだにも花子にじゃれつく豆は、かまってもらいたくて仕方ないらしい。
 ちょっと歩きにくそうな花子だが、ゆったりと尻尾を振って歩いております。



 そんなこんなで、言い方を変えてしまえばダブルデートを終えて帰宅してからは夕食の時間と相成りまして、片付けやなんかも終えてからは、

 「おおお!正しいお返事の書き方があるんですね!」
 「まぁな、」

 リビングにて、薔に書き方を教わりながらナナが結婚式招待状の返信ハガキを書いていた。
 花子と豆は仲良く、おやすみタイムである。

 正しい書き方があるとはまったく知らずにいたナナは、緊張のあまり手がプルプルと震えている。
 その手元を見ながら薔は可愛いなと思っている。



 「それにしても、結婚式の招待状って、送るほうにも色々書き方があるんですね……ちゃんと覚えとかないとです!」
 いったん筆を休めたナナは、改めてまじまじと招待状を眺めてみた。

 そして、

 「でも、薔なら正しい書き方がわかると思いますから、大丈夫ですよね!」

 明るく笑って隣を見た。




 テーブルへと、片手で頬杖を突き彼女を見ていた薔は、黙ってはいるがあきらかに驚いた様子だ。

 「ぎゃわああああああああ!」
 とたんにもう真っ赤っかなんてもんじゃなくなったナナさんは、恥ずかしさのあまり悲鳴をあげ、自分の台詞にびっくり仰天してペンを放り投げるところだった。



 「すっすすすすすみません!なんかっ、あの、えっと、プッ、プププププププッ、プッ…」
 ナナは決して失笑しているわけではございませんが、とにかく沸騰する勢いで両手をブンブンと振った。

 すると、

 「はぁ――――――……」

 ため息をついた薔は突然、テーブルへと突っ伏してしまったのだ。


 「あ、あのっ……」
 耳や首まで赤くしたまんま、ナナはオロオロしだす。

 ところが、よくよく見ると彼の耳も、どうやらほんのり赤くなっているようで、

 「……見んなよ?」

 突っ伏したまま、薔は言った。

 「いま俺…嬉しすぎて…、すげえヘンな顔になっちまってるから……」

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