※※第182話:Make Love(&Oral tradition).105








 「美味しいです〜!」
 リビングのソファにて、ナナは大喜びで果汁たっぷり真っ赤な苺を頬張っていた。
 彼女が食べやすいよう予め蔕を取ってくれた薔は隣に並んで、無論苺より、喜ぶナナの姿に微笑んでいる。




 すでに夕食は済ませてあり、今夜もお泊まりの豆は花子と仲良くおやすみタイムです。
 ナナと薔はふたりして、リビングにてラブラブ食後の果物の時間でございます!


 「この、練乳をつけても美味しいですね!」
 たまにたっぷりと練乳をつけたりして、ナナは美味しそうに苺を頬張っており、

 「おまえはほんと、美味そうに食うよな、すげえ可愛い。」
 隣で彼女を眺め、薔は笑っている。


 「あの…、薔ももっと召し上がってくださいよ……」
 眺められているとすごく恥ずかしくて、ナナがもじもじと彼に苺を勧めると、

 「濡れてる、ここ…」

 そっと伸ばした手の親指で、くちびるについた果汁を拭われてしまった。





 ドキッ!としたナナは、危うく苺を落としてしまうところだった。
 どこかしら妖しく微笑みかけた薔は、濡れた親指を彼女の目の前で舐める。

 心臓がドクンと脈打ち、踊り場で感じた熱が瞬時に、鮮やかにナナには迫り来た。
 もっと欲しかったのに、言えなくて、焦らされてしまった躰はその熱により大胆になれた気がしている。

 まだじゅうぶんすぎるほどに彼の感覚が残っているソコを、切なくふるわせると、頬を火照らせたナナはちょっと俯いた。
 苺をひとつ、手にしながら。



 「どーした?」
 俯いてしまった彼女にやさしく、薔は声を掛けてくる。
 今はそのやさしささえも、媚薬にすらなりうると言うのに。


 ナナは熱い吐息を零れさすくちびるで、おもむろに苺を咥えた。

 そして次の瞬間、

 グイッ――――…

 彼女は精一杯顔を上げ、彼の腕を引っ張って引き寄せるとキスをしちゃったのである。
 薔は突然のキスにちょっと驚いた様子だ。


 「ん……」
 赤く熟れた果実は、彼女から彼へと口移しされていた。
 じわっと、流れ込んだ甘酸っぱい果汁に、エッチな気分はより一層掻き立てられる。


 苺を口移しさせてからは、やわらかくくちびるが触れあい、

 「は……っ、」

 興奮したナナは息を乱し、ゆっくりとくちびるを離していきました。







 「美味しい……ですか…?」
 蕩けそうな表情で、彼を見上げ、吐息混じりにナナは尋ねてみる。

 「うん…」
 彼女がくれた苺を味わいながら、微笑んだ薔はナナを抱き寄せた。




 抱きしめられたナナは、ぎゅっと彼にしがみついて、

 「おまえがくれるならもっと欲しいな……」

 耳もとで、薔は囁く。




 「ん…っ、はいっ…」
 耳を撫でるあたたかな吐息に感じてしまったナナだが、おもむろに手を伸ばし、もうひとつ苺を手に取ったのだった。

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