※※第164話:Make Love(&Sex aid).10






 新入生たちに、厳しく注意をしたのはもちろん、果蘭率いる親衛隊の皆さんで、

 「薔さまは、“さま”なの!わかった!?」
 「は、はい…」

 その気迫は凄まじいものだ。

 「あと隠し撮りも駄目!あたしたちですらまだ撮らせていただいてないんだから!いい!?一枚でも撮ったら現行犯逮捕だからね!」
 「はいっ!すみません!」

 ……だから凄まじかったのか。






 クスクス…

 このとき、果蘭の制裁を遠くから眺めているひとりの女子生徒がおり、

 「ウフフ…、チャーンス…」

 彼女は長い黒髪をさらりと揺らし、足取りも軽く廊下を歩いてゆきました。














 「あれ?キャーキャーが聞こえなくなったよ?」
 「その代わりぃ、鮎佐先輩のモスキート音がぁぁ、」
 「もすきーとおん…?」
 いくら不快とは言えどもそれはモスキート音じゃないと思われるが、ナナはキョトン、こけしちゃんはニコニコと廊下のほうへと向くと、

 「おはようございます、三咲先輩っ。」

 いつからそこにいたのだろうか、見たこともない女の子に明るく声を掛けられた。




 …………せんぱい!?

 初めて先輩と呼ばれたナナは、何だかくすぐったくなり、

 「おおおはようございます!」

 と返すと同時に、

 (あれ?先輩は確か下っ端の位だったような…)

 とても懐かしきことを思いだし、複雑な気持ちにもなった。


 「桜葉先輩もおはようございますっ。」
 「おはようぅ。」
 女の子はきちんと、こけしちゃんにも挨拶をしている。

 長い黒髪がふと、光を反射し煌めいた。
 先輩と呼んでいるからには一年の生徒であろうその子は、ぱっちりとした瞳にもどこかしら和の儚さを帯びた、清楚な雰囲気の女子生徒である。


 女の子は、こけしちゃんほどでは到底ないがにこっと笑って改まると、

 「あたし、1-2の紺野(こんの)あかりと言います、じつは三咲先輩とは通学路が一緒で、中学の時に何度か見かけたことがあるんです。」

 と、ナナを真っ直ぐに見つめ明かしてきた。



 「そうだったんですかーっ!」
 ナナは驚いたようだが嬉しそうに返し、

 「すっごく可愛いなと思って、ずっと気になってたんです…」

 つづけたあかりは視線を逸らそうとしない。




 ……はぁぁっ!

 さすがなこけしちゃんはその視線から、隠しながらも送られている感情を悟ってしまった。


 そんでもって、ナナはあかりの視線に次第にたじろぎ始め、

 (ゲイへの希望がぁ、濃くなったかもぉぉ。)

 こけしちゃんの瞳は、ゲイの後輩の予感と粋な計らいにキラッキラァァでございます。

 (薔くぅんには黙っとこうぅ、目指せヤキモチプレイぃぃっ。)









 結局あかりは、挨拶をした後ナナを凝視し、教室へと帰って行きました。

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