※※第173話:Stray(&Masturbation).1
「……やっぱり、そういうことだったんだ。」
家を出る前に連絡を入れ、屡薇は真依のアパートへ寄り玄関先にて話をしていた。
「ごめんなさい…、あたし、うっかりしちゃって…」
豆を抱っこしている真依は、しょげ返っている。
じつは、本日は花子を豆に独占させるわけにはいかないと、屡薇なりに気を利かせて長いお散歩がてら真依に預けにきたのです。
ちなみに真依は非常に運よく、店舗の改装のため今日から丸々一週間仕事は休みとなっていた。
「いや、真依さんは悪くねぇよ、俺がきちんと説明しなかったのがいけねぇし、薔ちゃんの勘が鋭すぎんのもいけねえ。」
屡薇はなだめるかのよう、やさしい声を掛ける。
「勘が鋭すぎることは別に、いけないことじゃないと思う…」
「あ〜、真依さん遠回しに俺だけ責めてる。」
「遠回しってほどでもないですけどっ、」
……なんだかんだで、イチャついていないだろうか?このふたり。
「とにかく、それが聞けて良かった。あと真依さんに会えて良かったよ。」
屡薇が笑ってさらりと告げると、
「あああの!新曲、楽しみにしてるから!」
真っ赤になった真依は、恥ずかしさのあまり話を逸らしたのであろう。
「うん、ありがと、豆のことよろしくね?」
「任せて!」
微笑ましく思った屡薇は、ギターバッグを肩にひらひらと手を振りスタジオへと繰り出していきました。
「ああ〜!あたし猫飼うつもりでペット可のアパートにしたんだけど、役に立ててほんとに良かった〜!」
しばらくして、真依は歓喜の雄叫びを上げた。
その喜びがちゃんと伝わっているのだろうか、高い高いされた豆はピコピコと尻尾を振っている。
「豆……くんか、雄か、うんうん。」
しかと確認した真依は、豆に向かって、
「君のご主人様って、やっぱゲイなの?」
「ワン(※ぼくよくわかんない)♪」
かなり気になったため、尋ねてみちゃったのだった。
そして、ふと、
「あたしさ、全然よくはわからないんだけど…、きちんとあの子に話したほうがいいと思うんだ…、屡薇くんがあんなこと聞くなんて、何かあったってことじゃんね?」
豆に向かったまま、真剣な表情で真依は話し始めたのだ。
豆はずっと尻尾を振っている。
「こないだね、あたしあの子に可愛いあだ名つけてもらったの。フウちゃんなんだけど…なんでフウちゃんなんだろ?まぁ、それはこの際いいとして、あたしあの子に会いに行くわ!学校が終わる頃に!」
真依は豆に固い決心までもを明かすと、
「よーし!ネットで調べて何か、豆くんに美味しいご飯作ってあげる!」
「ワンッ(※わーい)!」
いったん、共に奥へと向かったのでした。
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