※※第172話:Make Love(but…Stray).99








 「すごいですね!わんちゃんのケーキは、野菜と果物いっぱいで美味しそうです!」
 ウキウキのナナさんは、彼が細かく刻んでレンジでチンしたカボチャをせっせとスプーンで潰していた。
 彼氏と一緒にケーキ作りに励んておりますので、彼女が手にしているボウルの中はきちんとカボチャの色をしておりますよ。


 「それに、薔と一緒にお料理をするのは楽しくて仕方ないですよ!」
 エプロン姿のナナのウッキウキは、止まる処を知りません。
 …もし一人でケーキ担当だったとしたら、やはり見本では白いケーキでも真っ黒くなってしまったのだろうか?


 「そうだな、」
 微笑んで返した薔は、彼女の隣で同じように、蒸したさつまいもをスプーンで潰していた。

 「どうしてわたしのはこう、薔がやってらっしゃるみたいになめらかにはならないんですかね?」
 「俺は隣におまえの肌っつう、なめらかの見本があるからな。」
 「ぎゃほう!」
 いたってイチャイチャしております。

 「でででしたら、わたしは薔のお肌を見本にします!」
 「俺のは特になめらかじゃねぇだろ。」
 「ばちが当たりますよーっ!?」










 真っ赤となっていたナナは、声を張り上げた後に、

 (ちょうどこのひと、腕まくりしてらっしゃるし…)

 ……ジッ

 と、無造作に腕捲りされた彼の腕を見つめてみた。

 (ダメだーっ!なんかもう、色っぽくて恥ずかしくなってきちゃったよーっ!)
 ところがものの5秒とたたないうちに、真っ赤っかとなって仰け反り萌え悶え始めた。




 「何やってんだ?」
 「えっと、あの…、とりあえずこちらのカボチャは、色っぽくすればよろしいでしょうか…?」
 「できるもんならしてもいいぞ?」
 「かしこまりました!」

 ……色っぽいカボチャって、どんなんですか。





 ナナは一所懸命に、色っぽくすべくカボチャを潰し始め(当初の目標はなめらかだったはずなのに)、

 クスッ…

 と笑った薔も、隣でさつまいもを潰します。


 キッチンには自然の甘い匂いが漂っており、そうこうしているうちに、

 ピンポーン

 ふたりで選んだプレゼントが、届いた模様です!




 「あああ!来ましたよ!」
 喜び勇んで、ナナはインターホンへと駆けてゆく。

 「おい、エプロンは外してけよ。」
 ちょっと不機嫌となった薔は、貴重な彼女のエプロン姿を見せたくないようだ。




 「あっ!すみません!」
 ナナは慌ててエプロンを外す。

 夕陽は今に沈みゆくところだった。

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