※※第160話:Make Love(&Insert).90
「果蘭ももう高校三年生か、パパの跡を継いで婦人警官への道もそう遠くはなくなってきたな。」
こちら、鮎佐宅です、いつもより早めに帰宅できたパパうえは、晩酌をしながら娘とおしゃべりを楽しんでいた。
ママうえはバスタイムなんで。
「うーん、でもね、あたしずっとこのまま薔さまの親衛隊隊長でもいいかなって思ってる。」
「しょうさまって、だれ?」
キョトンのパパうえ。
一度、騒動に駆けつけたことございますけどね。
……それより、親衛隊隊長って就職先でいいのか?
「あ、てかMスタ始まってんじゃん、見とこ。」
「果蘭〜、パパとはもうお話してはくれないの〜?」
父は非常に名残惜しそうであるが、娘はさっさとテレビの前へと向かってしまった。
ちなみに、何だかごめんとしか言いようのないそのMスタとは、“ミュージック・スタミナ”の略である。
とりあえずぽちっと、テレビをつけてチャンネルを合わせてみると、
『今週初登場のヴィジュアル系バンド“FeaR”は、独創的かつダークな世界観の中、切ないメロディの新曲が話題を呼び…』
とあるバンドがこれから、新曲を披露する模様で。
『プロモーションビデオの女性が、きれいすぎて話題になってるんだよね?』
『俺たちより話題になってますね。』
司会のモンタさん(またまたごめん)に尋ねられ、ボーカルくんは笑っている。
「きれいすぎる女性とかあんま興味ないわ〜。」
ソファにて寛ぐ果蘭は、けっ、とした。
ところが、
『これが噂のプロモーションビデオで…』
映像が、流れだしたとたん、
あんぐり
と口を開けてしまったのである。
そんでもって、
「えええええええええええ!?」
果蘭はものすごい勢いで、テレビへと食いついた。
父はさりげなく怯えている。
口をあんぐりと開けたまま、見入っていた果蘭は、
「きっ、きれいすぎる女性ってアンタ、」
モンタさん(何度もごめん)に物申したのだった。
「薔さまじゃあ――――――――――んっ!!」
「あっ!LINE!LINEで皆に送っとかなきゃ!」
と、テレビの画面に向いたままスマホを慌てて取り出した娘のほうを見ながら、
(事件だーっ!)
パパうえはやや青ざめた。
(うちの娘の想い人が、女性だったーっ!)
……嗚呼、父のとんでも勘違いよ。
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