※※第159話:Make Love(&Attachment).89
きりぃぃぃっ
ハチマキを巻いたこけしちゃんは、気合いを入れてノートと向き合っていた。
「今日から高校二年生ぇぇ、あたしもぉ、今まで以上にがんばろうぅ、執筆活動ぅぅっ。」
……あ、そこはお勉強じゃないんだ。
「後輩にぃ、ゲイが何人かいることを熱望してぇ、願掛けのためにもベストカップリングで過激なの書いちゃおうかなぁぁ。」
と、熱き腐の魂がたぎるこけしちゃんは、おっとりにおいての素早さでファンシーなシャープペンシルをノートに走らせながら、
「あとぉ、GLでも萌えるのが浮かんでるのよねぇぇ、忙しいなぁぁ。」
エアー汗拭いをした。
“こいつ見てるとおもしれぇな、”
ちゃっかりこけしちゃんのベッドを占領しているゲイちゃんは、さりげなくその様を観察。
「あぁぁ、すごいぃ、さすがに書いてて恥ずかしくなってきたぁぁ。」
……ぽおぉぉっ
ふと、筆を休めたこけしちゃんは、頬を赤らめて、
「読者のナナちゃぁんはぁ、大丈夫かなぁぁ?」
と、親友に思いを馳せました。
ナナはもしかしたらこの頃くしゃみをしちゃって、薔にさらなるくしゃみを要求されているかもしれない。
そんでもって、
「ふぅぅっ、一息つこうぅぅ。」
どこまで過激なのかはいずれ定かになるだろうが、今度こそ汗を拭ったこけしちゃんはくるぅりと振り向き、尋ねました。
「ゲイちゃぁんも擬人化でぇ、攻めにまわってみるぅぅ?」
「ニ゛ャー(※聞くな、おれはゲイじゃねえよ)、」
ひとまず、現段階では言葉が通じなくてよかったです。
――――――――…
仕事の休みが不定期の真依はちょうど休みだったこの日、強く決心を固めバスへと乗り込んだ。
今日はきっと、彼はマンションにはいないだろうと、それが狙いだ。
ぎゅっ…
手にしたバッグの中には、一通の封筒が大事そうに入れられている。
キーホルダーは思い切って、外してきた。
おそらく、二度と付けることはないだろうと思いながら。
あのアパートを引き払ったということを、知ったのはごく最近のことだ。
執念で新しい住所を突き止めた自分の行動には、もはや嗤笑するしかない。
真依は黙って、車窓から流れゆく景色を眺めていた。
心はここに、あらずだったけれど。
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