※※第128話:Make Love(&Insane love).68







 ガシャン――――…

 注射器は床に落ち、ガラスの破片をいくつか散らせた。


 「まさか使い回しじゃねーだろうな?」
 「………………、」
 薔の問いに対し、ルイは無言の返答。



 「図星かよ、杜撰にもほどがあんな、」
 笑った薔はオトコの手首を離し、ベッドを下りた。






 「…君はもう、あの女と契ったのか?」
 「そうだ、よくわかったじゃねーか。」
 腑に落ちないルイは、表情へ憤りを顕にさせ、

 「ならばどうして、その匂いが微塵も漂ってこないんだ?」
 率直な質問を、投げ掛けてみた。



 落ち着き払っている薔は、大胆不敵に返しました。

 「アンタ救いようの無え間抜けだな、俺からは血の匂い自体消えてんだろ?今は。」









 この言葉でようやく、ルイはその事実に気づく。
 全ては先入観だったのだ。





 「どうやって、消したんだ?」
 「この状況で、俺がアンタにその方法を教えるとでも思うか?」
 薔は泰然自若としている。
 ルイはそのことが気に食わず、平常心を保つことができない。



 ギリ…

 唇を噛みしめたルイは、少しだけ後ずさった。

 「こんなに侮辱されたことは、生まれて初めてだ。」
 そのまま後ろの実験台へと、おもむろに手を伸ばす。

 「へぇ、大した人生送ってねーんだな。」
 特にどうということもなく、注射器をベッドの下へ向けて蹴飛ばした薔は、堂々と歩み寄る。




 そのとき、ルイの手はようやく“それ”を探し当てたのだ。


 安堵は不気味な笑みとなり、ルイは薔を見据えると、

 「私の人生は孤高だ、その為常に私は孤独を選び確固たる私を築き上げてきた、誰にも、邪魔をさせてなるものか!」

 突然、勢いよくナイフを振り落としてきたのである。

 ヒュッ――――…!






 薔は素早く身を躱したが、ナイフはベッドのシーツを鋭く切り裂く。


 「私を侮辱した罪は重いぞ!何が何でも君の血を見せてもら」
 半ば正気ではない笑い方で、再びナイフを振ろうとしたルイだったが、

 ドッッ――――――…!

 鳩尾に思い切り膝蹴りを食らい、同時に腕は掴まれたためナイフはいとも容易く床へと落ちた。



 「がはっ…」
 床に両手をつき、ルイはひどく苦しげに呻く。



 薔は光るナイフを、すぐに拾い上げると、

 「隙だらけの孤高だな、」

 ルイの目の前へと突きつけ、力強く言い放った。

 「孤独、つうのは、自ら作った逃げ道にあるほど容易いもんじゃねぇんだよ。」











 ゴク…

 ルイは息を呑む。


 その瞬間、

 「もう、そんくらいでいいよ、」

 落ち着いた声は響き渡った。

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