※※第157話:Make Love(&Endearment).88











 「なに!?」

 午前中のさわやかな玉露のひとときのなか、醐留権はいったんお茶を飲む手を休めた。

 「兄が結婚詐欺に遭っているかもしれないだと!?」








 「そうか、遭っていても特におかしくはないと思うのだが、」
 そしてすぐに、何事もなかったかのようにお茶を飲み始めたのだけど、
 「要さん!いくらなんでもそれはひどいよ!」
 一緒にお茶を飲みながら高級なお菓子を食べていた羚亜は、ガタンと立ち上がり憤慨した。
 どうやら昨夜、奏が電話で話しているのを偶然聞いてしまったみたいで、醐留権とふたりっきりになったため思い切って明かしたようなのだ。


 そして、

 「電話でなんか、必死に100万とか話してたんだよ!?ちゃんと何とかしてあげてよ!探偵くらい雇えるでしょ!?お金持ちなんだから!」
 と、力説すると、

 「探偵…ね、」

 渋い湯飲みをいったんテーブルへと置き、醐留権は眼鏡をキラリと光らせました。

 「よし、そこまで言うのなら私が調査をしよう。」

 と。



 「え?要さんはだって、教師じゃん。」
 目をぱちくりさせた羚亜は、腑に落ちない様子で、
 「探偵の経験ならある、心配いらないさ。」
 醐留権は得意気に、スマートなほうの携帯電話を取り出した。


 「えええ!?要さんかっこいい!」
 感心した、羚亜の前で、

 「それにはやはり助手が必要なんだが、桜葉は今日お出かけしているからね、」
 醐留権はとある人物に、電話を掛けました。

 「助手は暮中に頼もうか。」







 「要さん!要さん!」
 「なんだい?」
 もう携帯耳に当てちゃってるけど、羚亜の憤慨再び。

 「俺は!?」

 ってね。



 「羚亜が……助手?」
 怪訝そうな醐留権。

 とりあえず羚亜は、テーブルをひっくり返す様を想像だけしてみた。

 その瞬間、電話が通じまして。


 醐留権が第一声を発する間もなく、薔の第一声はこうだった。

 『用が無えなら切るぞ?』










 「用があるから電話を掛けたんじゃないか!」
 『なら3秒で言え、用件を。』
 「無理に決まってるだろう!」
 ちょい翻弄されている醐留権を見ながら、羚亜は心のなかで薔に感謝しちゃってる。

 そのとき、ふと、

 「いいのかい?暮中、」
 『あ?』

 ゾーラ先生は電話越しだけど不敵に微笑み、言ったのでした。

 「三咲は今日、家にいないんだろう?じつは桜葉と皆で私の家にいると」






 『ぶっ殺す。』

 電話は、切れた。








 「よし!迎えに行こう!ちょうど桜葉に今日は暮中を誘うようにと言われていたのだよ!」
 「ぇぇぇええ!?今“ぶっ殺す”って聞こえたけどこのタイミングで行くの!?」
 結局、羚亜も出動です。

 こけしちゃんの粋な計らい、なのか?




 …………はい!

 本日はなんと、乙女だらけのデートとイケメンだらけのデートが、同時進行の模様です!

[ 438/540 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る