※※第154話:Make Love(in Private room).86
駅へと向かうなか、何人かは街頭テレビをちゃっかり見上げていた。
………あれれれれれれ?
(いや、これは、直視してはいけない系ですか?ってかきれいすぎる…!)
とか、何人かは思っていると、
「あれぇぇ?」
ふと、立ち止まったこけしちゃんが、PVを眺めながらにっこにこと言ったのです。
「薔くぅんだぁぁ。」
…桜葉さんの勇気に乾杯だぁ――――――――っ!
クラスメートたちは大感動!
そんでもって、当人である薔が巧い具合に全否定する前に、
「そうなんだよーっ!こけしちゃん!可愛すぎるしきれいすぎるでしょーっ!?」
テンション急上昇のナナが、真っ向から肯定しちゃった。
「BLでは萌え萌えのシチュエーションなんだけどぉぉ。」
「うはぁ!あんなに大きく映ってるよーっ!」
「………………。」
…――――――ナナよ、後ろ!
「いやしかし素晴らしいな。」
「すごっ!」×2
醐留権と羚亜と愛羅も、大感心のなか、
「…………っ!」
今にも泣きだしそうになって走り出した女性の姿を、ただひとり、薔だけが捉えていた。
「はっ、はっ…!」
駅へと向かっていたはずなのに、闇雲に走り出した真依は苦しげに呟いた。
「お姉ちゃんはまだ、生きてるんだよっ…!」
姉の葬儀にも出席しなかった彼を、憎もうとしたけれどそれはどうやっても無理な話で。
「なんなの…?あんなきれいなひと、使っちゃって……」
嘲笑いながら涙が零れ落ちて、失速した真依はショーウィンドーへともたれかかった。
「ごめんね…?お姉ちゃん……」
…――――あたしはただ、あのひとの心の中に生きつづけるお姉ちゃんに、
嫉妬…しているだけなんだ――――――…
そして、早くもインターネット上には、こんな書き込みが。
“V系バンドFeaRの新曲PVの美女が、実は男だった件について”
……春休みはこのまま、平穏に、とはいかないのか?
…――I'm together with you always.
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