※※第126話:Make Love(&Charge).66






 「良かった、まだ親父、来てねぇんだ…」
 「あ?」
 安堵したかのように、見えた屡薇だったが、

 がしっ!

 いきなり、薔の両肩を掴むと真剣な眼差しを向けてきた。

 「今すぐあの女と契ってくれ、やり方なら、俺が教えてやるから。」










 「まだそんなこと言ってんのか?」
 薔は少し、呆れた様子で、

 「俺は本当は、知ってるんだ、親父が、あのひとを――――…」

 少し汗すら滲ませ、屡薇は“何か”を口にしようとした。



 ところが、

 ぐらっ…

 肩を掴む力は抜けて、屡薇の体は冷たい床へと崩れ落ちたのだった。

 ドサッ――――――…
















 「うーん、待ってろって言われたんだけど、薔がぜんぜん戻ってこないよ…」
 もどかしくて仕方ないナナは、それでも言われた通りに寝室にて待機。










 「こんばんは。」
 そこには、屡薇とさほど年は違わないだろうと思われる、長身の男性が立っていて、

 「驚かせてすまなかったね、暮中 薔くん。」

 男は、優しく微笑んだ。


 「これはまた実に美しい…、特殊な上玉のようだ。」













 ――――――…




 「なぁ、」

 薔は静かに、目の前の男へと問いかけた。

 「手荒な事していいのか?そいつ、アンタの息子だろ?」







 「“これ”は私の息子ではない、ただの造形物だ。」
 冷たく屡薇を見下ろし、ルイは答える。

 すると、

 「その台詞からして、ただの造形物はアンタだな。」
 嘲笑うかのよう、薔ははっきりと口にしたんです。

 「てめぇみてぇなのを親父と呼んでくれる、こいつに感謝はしねぇのか?」










 「世の中にはな、親と名乗りたくても名乗れねぇ親だっていんだよ。」













 …――――――それは、まるで、

 あたかも自分が、

 そんな存在を知っているかのような――――――…











 「私はそれに興味がない。ただ研究の為に君の血液がほしいだけだ。」

 ルイは表情ひとつ変えず、薔へと手を伸ばす。


 ぱしっ

 その手をすぐに振り払い、

 「研究?ただのエゴだろ。」

 笑ってはいるが鋭い視線で、薔はルイを見据えた。


 「言っておくが、俺はナナ以外にやれる血なん、体内に一滴も流しちゃいねぇぞ。」










 「やむを得ない、ここは、強制的に…」
 ルイがそう呟いた、瞬間だった。




 「ワオ――――――――――――――ン!!」

 夜の帳をつんざき、花子の遠吠えは響き渡った。















  …――――Overcome!

 『I shed all the blood only for you.』

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