※※第126話:Make Love(&Charge).66
…――――――――満月?
でもないか。
きっとあの月は円から、遠ざかる準備を始めてる。
ふわっ…
夜道に、金髪が風を絡めてなびく。
屡薇の足取りは、ふらふらと覚束ない。
彼に寄り添うものはただ、月光が浮かび上がらせる、自身の影だけ。
「――――――――…」
ふと、屡薇は立ち止まった。
そして、手を翳すようにして、夜空の月を見上げる。
「何度欠けても満ちるんだね、偉いよ、あんたは。」
月が好きだった、あの女性(ひと)も、こんな風に月を、
見上げるのが、好きだった。
「愛は必ず、裏切られる…」
やがて屡薇は自嘲気味に、ぽつりと呟いた。
…――――でもそれを、許すことこそが、一番の裏切りなのか?
月は何にも、言わない。
ただ、どこまで行ってもついてくるだけ。
なかなかしぶとい、けれども、不快な気持ちを与えることは、決して、
ないんだ。
突然、
「…………っ!」
何かを思い立ったかのごとく、屡薇は夜道を颯爽と駆け出した。
“Trigger”
自分で引けないと思い込めば、引き金はどんどん錆びてゆく。
――――――――…
セックスの後はちゃんと、ふたり一緒のバスタイムと相成ったんです。
もうすぐ日付は、変わっちゃいますけど!
(あああ、お風呂でもエッチすぎた…)
未だ火照るナナさんは、ほっぺたに両手を当てた。
「なんだ?そのポーズは。襲われてぇのか?」
「ほげえ!?」
よって薔はここでも、ムラッときちゃったようで。
またまたヤっちゃうのか!?
とも、思われるなか、
ピンポーン
真夜中のチャイムは、鳴り響いたのだった。
ガチャ――――――…
花子も特に鳴かなかったため、薔が玄関のドアを開けると、
「…何しに来た?」
そこには、屡薇が立っておりました。
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