※※第132話:Make Love(&Apical).70
少し時間を遡ってからの、学校での出来事を描き出します。
この日醐留権が、職員室にて仕事に励んでいると、
「あ〜、いたいた〜、醐留権先生〜、」
校長がパタパタと、近寄ってきたのである。
「どうしたんですか?校長先生、」
眼鏡をくいっとさせ、椅子に腰掛けているにも関わらず醐留権が半ば見下ろすと、
「あのね〜、醐留権先生ね〜、3月1日は出張してほしいんだよ〜。」
息をきらす細宮校長は、とんでもないことを言ってきた!
「は?」
醐留権の雰囲気は、とたんに険しくなる。
「なぜよりによって、私なのでしょうか?そこら辺にいる暇そうな先生方から、適当にどなたか行かせれば良いじゃないですか。」
「すごい返しきたコレ〜。」
キリリと諭す醐留権のまえ、校長はのけ反ったが、
「だってさ〜、未来を担うフレッシュマンティーチャーズの研修だからさ〜、どうせなら若くて優秀でかっこいい先生に行ってほしいじゃん〜?」
次にはピョンピョンと跳びはね、こうつづけたのだった。
「大丈夫〜、日帰りだから〜。」
醐留権は、思った。
(なぜ私は若くて優秀で、かっこよかったんだろうか…!?)
…………おや?待てよ…
「それなら校長、暮中を行かせれば良いのでは?」
「だって薔くん、先生じゃないもん〜。」
…………そりゃそうだ!
どうやら醐留権先生は、かなり焦っているようです。
――――――…
車内にて、報告を受けたこけしちゃんは黙り込んだ。
「日帰りとは言っても、こちらに着くのは23時を過ぎてしまうのだよ…」
醐留権が真剣な表情で、つづけると、
「ゾーラ先生ぇ、」
こけしちゃんはにっこりと顔を上げ、言ったのでした。
「断っちゃダメだよぉぉ?公私混同は禁物ぅぅ。」
黒いベンツを見送ってから、こけしちゃんは人知れずため息をついて。
「これで良かったんだよぉ、ゾーラ先生ぇはぁ、先生だもぉんぅ。」
自分に言い聞かせるようにっこりと笑ってから、玄関へとおっとり走って行きました。
“ほんとにこれで、良かったんだな?”
塀の上から見守っていたゲイちゃんは、さりげなくこけしちゃんの後をついていった。
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