※※第115話:Make Love(ClimaxW).57







 瞬間、ハウリングは治まり。



 「ナナちゃぁん、かっこいいぃ。」
 こけしちゃんはニコニコと、

 「三咲さんすごーい!」×2

 羚亜と愛羅は手を取り合って、ナナを見守る。






 「…巧くいっただろうか?」
 なんだかもうじれったくて仕方ない醐留権は、それでもすぐに発車できるようにとベンツにて待機。










 「これ演出?」
 「なに?あの女、」

 会場からは一気に、ブーイングの嵐が巻き起こった。





 「静かにして!!」
 ステージのうえから、ナナは怒りの叫びを響かせる。


 シン――――――…

 なんともまあ、色んな人が集まっているこの場所では、香牙の効果は絶大で、一瞬にしてライヴ会場は鎮まり返った。






 「へぇ、やる、」
 感心している屡薇へ、ナナは真っ直ぐに歩み寄ると、

 スッ…

 右手を差し出し、力強くはっきりと告げました。

 「キーホルダーを返してください。あれはわたしにとって、とっても大切なものなんです。」











 フッ――…

 と笑った屡薇は、少しも動じずあっけらかんと返した。

 「何のこと?」





 ふざけないで!と、ナナが叫ぶより早く、


 『そんだけ大事なもんなら、ちゃんと返してやんねぇとなぁ。』

 マイクを手にくっくっと笑いながら、ステージの上手より夕月が現れたのだ。












 「夕月さん!?」
 面食らう、ナナ。

 会場はただ静かに、この光景を見つめている。


 「そうか、ナナちゃんをさらったのはお前か、」
 メンバーがポカンとするなか、夕月は屡薇に向かって颯爽と歩いてくると、

 ぐいっ

 その胸ぐらを掴み、耳元で言いました。


 「ここで彼女を帰さねぇなら、お前のバンドは二度とこの業界で演奏できなくなるぞ。」

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