※※第115話:Make Love(ClimaxW).57










 キ――――――――ン…!



 突然、会場に、耳をつんざくかのようなハウリングが起きた。



 「……っ!何だ!?」

 対策はしてあるはずで、予期せぬ出来事にライヴは一時中断となる。


 (うおわ!すごい音だよ!)
 驚いたナナは、両手で耳を覆っており、周りも同じようにしながらザワザワとざわつくなか、

 グイ――――…

 彼女はいきなり、両手を掴まれぐいぐいと出口に向かって歩き出された。


 「えっ…?あの、ちょっと!」
 ステージへ、前進しようと固く決心したところへ持ってきて、今度は何事かとひどく慌てる。




 すると…、

 「大丈夫だよ、三咲さん!」

 警備員の格好をしたその二人組は、振り向いて、笑いながら言いました。

 「俺たちが出口まで、案内するから!」





 なんと、その二人組は、警備員に扮した羚亜と愛羅だった。




 「おわあああ!?なぜにこんなところに――――――――っ!?」


 予想外の再会に、ナナは歓喜の雄叫びをあげた。
















 「押さないでください!」

 前方では何人かのスタッフが、ステージに向かう観客を必死になって制止している。

 互いに譲らない押し問答と、ステージ上もちょっとしたパニック状態で、これではらちがあかないかと思われた。



 そんななか、

 ダンッッ!

 ひとりの小柄なスタッフが、近くにあった機材に思いっきり拳を叩きつけたのである。


 見事に拳はめり込んで、少しの煙まで上がってゆく。




 「押さないでぇ、もらえますぅぅ?」
 ニコニコと言い聞かせたそのスタッフちゃんは、“怪我しねえ程度になら何を壊してもいい”と、既にあるおかたよりお許しを得ていた。


 ……こわあぁあ!

 そこら一帯だけ、やけに騒動は鎮まりまして。








 「ちょっ、ちょっと待っててください!」
 「えっ…?」

 羚亜と愛羅の手から離れたナナは、

 ぎゅっ…

 肌身離さず付けていた“S”のネックレスにつよく手を当ててから、指輪を素早く外しコートのポケットにしまい込んだ。




 そして、

 タンッ――――――…!

 地面を蹴ったナナの全身は、宙を舞うようにして、


 あっという間にステージの上へと、たどり着いていた。

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