※※第112話:Make Love(&Lick).54
いつぞや泊まった旅館より更に高級そうな旅館に、いったん荷物は預けまして。
ナナはとりあえずバスのなかにて、只今いる場所を辞書で引いてみた。
ながの【長野】
@中部地方の中央部、内陸の県。信濃国を管轄。面積1万3562平方キロメートル。人口219万6千。全19市。
A長野県北部、長野盆地にある市。県庁所在地。善光寺を中心に発達した門前町。リンゴ栽培が盛ん。食品・電子機器工業が立地。人口37万9千。
「………………??」
ちんぷんかんぷん過ぎたため、@の時点で頭がこんがらがった。
「辞書持ってきたのは褒めてやってもいいが、この場合はこっちだ。」
「おわ?」
隣の席より、薔が彼女へとガイドブックを手渡す。
開いてみたナナさんは、
「美味しそう…」
グルメのページに興味津々だった。
「いやぁ、よくわかりました、長野は美味しそうでした!」
「そうか、」
となると、全ての都道府県は美味しそうになるであろうなナナのあたまを、笑いを堪えながら薔がなでなでしている。
バスのなかは、やたらあったかいのだけど、
ふたりはいったい、どこへ向かっているのか!?
――――――――…
(ななななな、なんですか!?これは!)
自分の名前を2.5回(3回か?)分唱えたナナが、薔と共に降り立ったは、
はい、スキー場でございました。
「え?なぜにこんな細い板で、わざわざ雪の中を滑らなくてはならないんですか?危なっかしいんで、普通に歩けばいいじゃないですか!」
「そいつはごもっともかもしんねーが、行くぞ。」
…………えええ!?
とりあえず怯えまくっているナナは、
「ひぎゃあ――――――――――――っ!」
あーっ、ぁーっ…(※恐怖のエコー)
悲鳴を上げながら、立派な初心者コースで薔に指導を受けていた。
「おまえ、なんだかんだでちゃんと滑れてんじゃねーか、」
「そそそそんなことはぁ、ありませんてぇ…っ、」
おそらく指導の仕方が良いのであろうし、ここ初心者コースだしで、出だしがなかなか好調だったナナさんは、
「次はあそこな?」
「はい…?」
薔に上のほうを示され、そちらを恐る恐る見た。
そこにはいきなりの、上級者コースが聳え立っていた。
……ひぇぇぇぇえええ!
「あんなとこ、死にに行くんですか!?早まっちゃダメですよーっ!」
「死にに行くんじゃねーよ、滑りに行くだけだ、」
薔はただ、彼女の反応を見て楽しんでおります。
「来い。」
「ぎゃあ!」
そしてナナは、半ば強制的に連行されたのだった。
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