※※第108話:Happy Birthday(&Christmas Eve!).2
「おわあ!真っ白です!」
ナナは窓の外を見下ろし、感嘆の声をあげた。
「やたら可愛い反応してんな、」
そんな彼女の隣には、薔が寄り添う。
すでに、目に映る外の世界は、雪が白く染め抜いていた。
異例の初雪が、あちこちで観測されたこの日。
真夜中から降り始めた雪は、辺りを仄かに白く覆い、まだはらはらと降りつづいていた。
よって、交通機関は麻痺。
休校となった学校も多く、通勤の人々は予想外の早起きを強いられるという、念願のホワイトクリスマスは朝からちょっとしたパニック状態になっていた。
「うう、でもお外は寒そうですね、」
「そうだな、」
思わずナナがぶるっとふるえたため、薔は彼女の肩をそっと抱く。
きゅうっ…
ナナの胸は、痛苦しいほどに締め付けられていた。
(今日このひと、16歳になったんだよ……)
おめでとうございます…
だれよりはやく言いたいけれど、言えない自分がいる。
だってわたしはこのひとに、プレゼントできるものが何もない…
ナナが黙り込んでしまったため、薔はやさしく促した。
「何か飲むか?」
「え…?」
唖然としているナナの手を、ちょっと強引に取りまして、
「ほら、来いよ、」
「あっ、はい、」
薔はキッチンへと、向かったのでした。
…よかった、そんなにそこはかとなく卑猥じゃ、なかったよね?
“今日はご主人さまの、お誕生日です♪”
尻尾をフリフリ、朝からソワソワの花子は、
“でも、ナナちゃんがまだ言わないから、おめでとうは取っときましょ、”
と、とりあえずふたりの後をついていったんだとさ。
リビングには、キラキラと輝くクリスマスツリーひとつ。
――――――――…
「え?今日は学校、休みなの?」
休みじゃなかったら遅刻決定だった羚亜は、目をぱちくりさせて醐留権へと聞き返した。
「あぁ、外を見てみるといい。」
醐留権は微笑み、言いますので、
「えっ、うん…」
羚亜は窓辺へ歩み寄り、カーテンを開けた。
「うわあ、雪だよ…!」
「だから学校休みなんだ、」
と、納得しておりますと、
「羚亜、」
後ろから、醐留権はこんな言葉を投げ掛けたのでした。
「ちゃんと明日の準備をしていくなら、今日は外泊を許可しよう。」
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