※※第97話:Make Love(&Possessive).43
授業もいつも通り、滞りなく進んでゆきまして、
放課後です。
「ああっ!今日はわたし、バイトでした!」
「おまえ、また忘れてたのか?」
自分がバイトであることをうっかり忘れていたナナと、彼女がバイトであることをしっかり把握していた薔は、
「あのですね、きっと、薔とお家まで一緒に帰りたいあまり忘れるのだと思うんです!」
「口説いてんだな?」
「ぇえ!?」
いつものように手を繋いで、仲むつまじく帰っていきましたとさ。
「…愛羅さん、何か、俺たちばっかがバカップルだと思う?」
「え〜、よくわかんないけど羚亜く〜ん、バカでなんぼだと思う〜、」
何かが腑に落ちない羚亜と、そんな彼にうっとりする愛羅は、教室にてこの後もバカップルトークを繰り広げたのでしょう。
――――――――…
「はっ!部活に集中するあまり、わたくし最近、眺めるのが日課となっておりました薔さまと三咲さんの下校風景を、見逃してしまったかもしれません!」
グラウンドにて、君は今部活中なんだから何も間違ってはいなかった黒熊くんは、日課を見逃してしまったかもしれないと(とりあえずは現時点で確定だけど)若干青ざめた。
「わたくしにも、桜葉さんのような可愛らしい彼女がいい加減でき」
「ゴルァァア!ベェェンンン!!」
黒熊くんの未練がましい呟きは、千国先生の強烈な巻き舌によって遮られました。
「何度言ったらお前はぁぁあ、その走り方やめるぁあれるんだぁあ!?オルァァア!!」
千国先生は公共の場にて、熱血的指導を繰り広げておりますが、
「僕もう、野球部やめます!」
お姫様座りをするベンジャミンは、泣きながらそう訴えてきたのである。
すると千国先生から突然、巻き舌は気配を消し、
「そうか、ベンよ、お前さんが真の漢になれるよう、おれぁ頑張ったんだが、お前さんにはただの苦痛でしかなかったんだな。」
と、レトロ過ぎるサングラスに重い空気を纏いつつも、笑いながら諭してきた。
「ちっ、千国先生…!」
ベンジャミンはめちゃくちゃ、心打たれたようだ。
「千国先生、ごめんなさい!僕、真の漢になる!」
「それでこそベン、漢だ!」
溺死体とジャワ原人が抱きあっておりますので、とてもではないが見れたものではございません。
そして大感動中のベンジャミンは、
「僕、真の漢になって、何としてでも薔さまに、振り向いてもらうよーっ!」
って、叫んじゃった。
「ベェェンンンよぉぉおあ…!」
怒髪冠を衝く勢いの、千国先生。
(ベン先輩、逃げて…!)
野球部の皆さんは、大慌て。
和やかが一変して、ちょいとしたホラーであるのかもしれない。
のか?
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