※※第87話:Make Love(+Reward).34







 ナナと薔が、雨に濡れびっしょりで帰宅をすると、

 「ワン!」

 玄関では、バスケットの中にバスタオルを用意した花子が、お座りして尻尾をフリフリお出迎えでした。


 「さすがは花子だな、」
 「花子ちゃーん!」
 感心するご主人さまと、大感動のその彼女。




 花子はハッハッと息をしながら、

 「ワンッ♪」

 珍しくか、元気よくナナへと飛びついたのだ。



 「花子ちゃん、濡れちゃうよ!?」
 慌てふためくナナですが、

 ちょんちょんっ

 と花子は、彼女が手にしているコンビニのユニフォームを、前脚でつっついているのである。


 ナナは、閃いた。

 「まっ、まさか、花子ちゃんっ…!」

 …面接に受かったことを、喜んでくださってるの!?





 「花子ちゃんっ…!」
 「ワン!」
 びしょ濡れのまんま、花子を抱きしめてしまいそうな勢いの、ナナなのですが、

 「おい、」

 やっぱり不機嫌そうな声は、響いたのでした。

 「俺は、除け者か?」





 (※ふたり同時に、)
 ぎゃあ――――――――っ!
 ワオ―――――――――ン!






 「こうなったら熱出すまで、濡れてきてやんぞ?」
 「いやいやもう、そういう可愛いことを、おっしゃらないでくださいよーっ!」
 「ワン!」

 乙女たちはなんだかんだで、こころが萌え上がったのでした。










 そんでもって、花子は気を利かせたのか、バスタオルを一枚しか用意しておらず、

 「ゃ、ん…っ、くすぐったいん、ですけどぉっ…っ、」
 「おい、エロい声出すんじゃねぇよ、ここでしちまうぞ?」

 ふたりして玄関にて、拭きあいっこをしたのですな(※あわよくばセックスですが)。


 「いやっ、ン、これ、出さないほうがムリ…っ、って、どこ触ってるんですかぁ…っ!?」
 ただ拭いているだけには思えないのであるが、火照ったナナがあまりにも過剰反応を示すため、

 「………フッ、」

 薔は、笑いだした。



 「なぜに、笑ってらっしゃるんですかぁ…っ!?」
 「おまえが、可愛すぎるからだろ?」

 ……えええ!?




 ナナは真っ赤で、濡れた冷たさによってではなくぶるぶるとふるえ、

 (しゃ、写真…!)

 とも思いながら、

 「薔も早く拭いてくださいよ!熱出してはいけませんので!」

 慌ててそう、提案してみた。


 「まぁ、熱なん、おまえがいれば平気だな、」
 「ぇぇぇええ!?」






 やがて、一通り拭き終えた頃、

 チュ―――――――…

 ふたりは玄関にて、くちびるを重ねたのでした。




 “お部屋をあたためてくる、必要はあるかしら?”
 花子は恥ずかしそうに尻尾を振りながら、リビングへと向かってゆく。


 「ん………」

 甘い声は漏れて、何度かくちづけあってから、

 「さて、」

 くたぁっとしてしまったナナに向かって、ちょっと妖しく笑いかけた薔は言ったのでした。

 「風呂行くか、」







 「やっぱりご一緒ですか――――――――っ!?」
 「いーから早く来い。」


 こちらはもう、お決まりのパターンですかな!?













 …――謎の男より、言伝てを預かったナナだったが、それを薔に伝えようとは決してしませんでした。



 …わたしがこのひとを、何としてでも守らなきゃ。

 だって、おかしいよね。

 “ぐちゃぐちゃにして食べちゃいたいほど愛してるよ”って、それはさ、

 このひとのことをちっとも考えてないし、何より、


 この上なく、大迷惑なんだよ!!

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